憂い ページ10
「頭を冷やしてくる。」
そう言ってくるりと背を向けた司に対して、Aはくるりと振り返った。
「戻ってくるけど思想観念は変わってないに、一億点。」
「はっ、賭けになられねえな、帰ってきたらA、てめえはぶん殴られるに百億点だ。」
「ならここを早く出ないとね、」
そう言ってたち去ってしまったAを横目に、大樹と杠はただただぽかんとするだけ。ただ唯一背中を見送っていた千空だけは、ポリポリとうなじを描いたあと、はあとやるせないように空を見上げた。
ーーー
鎌倉の大仏を見つけてから移動している千空一行。まるで天竺を目指す孫悟空を思い出してしまったAだが、先頭を歩いていたはずの千空が隣に来たことでそれは吹っ飛んだ。
「な〜に考えてんだてめえは。」
「いつも考え過ぎててどれのこと言ってるのかわからないわ。」
「……だから、この間の獅子王とのやり取りで思ってることだよ。」
「貴方に言えばわかるかもしれないけれど、ただの杞憂で終わればいいと思ってるだけだから、何もないわ。」
「いーから、一々めんどくせえんだよ早く言え。」
ぶっきらぼうではあるが、気を使うというよりも、Aが千空を侮っているようにも捉えたらしい。
グリンと振り返った形相の怖いこと怖いこと。
Aは観念したようにゆっくりと吐露した。
「彼の考え方はいわゆる選民思想ね。大人子供と区別をつけているけれど、復活させるべき人間とそうで無い人間に分かれている。
彼の行動原理が分からない、命の重さを知ってもなお、殺人を受け入れるってどれだけストレスになると思う？
元から武術の心得はある人だけど、それを知っているなら崇高なものに置き換える筈よ。
あれじゃまるで独裁者の一歩手前ね。」
「独裁者の一歩手前って言うと？」
「彼の手足となる人間がいないことだけ。」
ばっさりと言い切った彼女に、千空は目線を泳がせた。
化学やテクノロジーに興味はあるが、所謂気持ちの共有には惹かれない。
ルールが見えないし、そこに千空が疑問を抱かないし、恋愛脳は1番非合理的と捉えているから。
でも、1番は、、
「こんな“これは歴史の繰り返しだ”みたいなテンプレート、私はごめんよ。」
ぎゅっと膝を抱えている彼女が一番、その気持ちの共有を断ってるから。
こいつ幾つだよ、と言う今更な思いは横に置き、ため息をする千空。
「なら、どうしたい、A。
Aは何をしたい。」
真っ当な質問に膝を抱えていた手を緩めるA。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
