46 ページ46
それでもじんわり残った感情はAの顔を俯かせるには丁度良かった。
横でじっと見ていた千空は、離れるでもなく触れるでもなくAのそばにいた。
「ーーーーー」
言葉にならなかったが、それは間違いなく千空も聞いたことのある人たちの名前。
あれから本当に随分と長い時間が経ったんだと、Aは初めて自覚した、そんな感じだった。
ーーー
真空管のフィラメントに耐えうる存在、タングステンがこの世の中にあることを元旦のその日に知った千空。
光る鉱石が洞窟内部にあったことを自慢げに告白したクロム、そしてなぜか知らないが、というか完全に怪力役として呼ばれたマグマが、洞窟内部の発掘調査に向かった。
「気をつけて、洞窟内部は地盤もわかっていないし、倒壊しそうだと感じたらすぐに逃げて。」
「おうA、安心しろ少なくともてめえよりは危機感持ってからよ。」
ふっとあいも変わらずな傲岸不遜な態度に、やれやれとAはため息をついた。
そんな軽やかなやりとりに、おっかしいなとゲンは首を傾げる。
この間のクリスマスを経て何か進展があってもいいように感じていたが、そんなのがカケラもない。
クリスマスが恋人達の日というのは日本だけの風習だが、それあっても良くない？と思っていると、千空が煩わしそうに後ろからチラッとゲンを睨みつける。
「よ・け・い・な・こ・と・す・る・な。」
口パクでそう告げた彼に対して、ドキッとしたゲンだが、あはは〜〜と苦笑いで彼らを見送る。
さてと、呟いたAに対して猫撫で声で擦り寄るゲン。
「ねえ〜Aちゃんはさ、千空ちゃんのお誕生日知ってるの？」
「へ？知らないけど。」
「そっか〜知らないか〜〜〜って、ええええ？！」
素っ頓狂な声をあげるゲンに、Aは黙々と作業を続ける。
近寄るなという不機嫌オーラ万歳だが、恐る恐る顔を覗き込むゲン。
「あの千空ちゃんとは長い付き合いなんだよね。」
「ええ。」
「なのに知らないの？」
「男がそんなだせえこと教えるかですって。」
「だ、ダサいって。。。」
「安心して、私も千空に誕生日は教えてないから。」
「えーーーーどこに安心する要素が？？？？」
ハテナを浮かべるゲンに、Aは優しく笑った。
「私と千空ってずっとそんな関係だったのよ。
だから今更クリスマスを機に告白するなんてこともしない。」
「え、Aちゃんってばなに言っちゃっての〜〜」
ヒクヒクと口角が揺れるゲン。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
