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「別に、マイクと、銅線と真空管の図案を見れば大体やりたいことはわかるわ。
それよりも一番難易度高いのこれじゃないの?」
ピタッと手を添えたそれは真空管。
わーってるよと千空は答え、それからAの顔をじっと見た。
「何。」
「いや、悪かった、頭ごなしに怒鳴って。」
「……」
フリーズしたのはもちろんAだけでは無い。あの千空が、感情でものを喋るとは思わなかったからだ。
いや確かに前もAの危険な行為に対してこれでもかと怒鳴り散らしていたが、あれはきちんと理論が通っていたし、千空らしい言葉だったが今のは違う。Aはじっと千空の顔を見つめたかと思えば、
「……何か企んでるわね。」
「やっぱり気づくか。」
ニヤッと笑ったゲスい顔にAはぐるりと目を回した。
「てめえの素っ頓狂な行動にはもうわかった、理解はしねえが脳内の範疇に入れておく。
それよか次危なっかしい真似して、その首に首輪つけられないように気をつけろよ、わんちゃん。」
煽りまくってからへらへらと笑った男に、Aはむかついたものの、煽られた手前謝るのは嫌だったらしい。
「ったく、これが欲しいならさっさと言いなさいよ、」
手元から出したのは複数の図案書、Aが大まかに手を入れ、朱で千空が訂正を入れたものだ。
受け取った千空はおおこれこれ〜〜と言いながらそれをそのまま科学班の二人に投げた。
「これをもっとスケールのでかいものにしてくれ。」
「「おお!!!」」
見たこともない指示書を前にして、千空はそうかと考えてから、金狼銀狼が苦戦していた綿飴製造機の改良を提案した。
答えは目の前にあったのに、それに気づけなかった自分に、だっせえなと思いつつ千空は指示を進める。
何か欲しいもので見つけたらしい千空を、腕を組み遠くから眺めていると、元村長コハクとルリの父親がやってきた。
「先日は凄まじい喧嘩だったな。」
「お見苦しいところを見せてすみません。」
「何、若いうちのぶつかり合いなど可愛いものだ。」
はははっと笑った村長はその後、そっとAの顔を覗き込んだ。
「そなたは見れば見るほど妻に似ているな。」
「え?」
「いや髪色や目は似てないが、なんというか立ち振る舞いだな。」
はははっと笑った元村長に、Aはそれはそうだろうと心の中で呟いた。
なぜならAと彼らの始祖百夜には実際に叔父と姪とはいえ、血縁関係にあるのだから。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イライザ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年4月27日 23時