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「なるほど、石によって始まるからストーンワールド。」
古屋の隙間から覗いた夜の空にAは俯き、つぶやいた。
部屋の中は畳2枚分ほどの広さだろうか、最小限の人の出入りしか感じられない古屋の中で、Aは油を燃料とする炎の明かりの元治療を受けていた。

「悪いかよ。」

と言いながら、声だけブスくれながら彼は丁寧に慎重にAの怪我に触れ、細かい塵や泥を取り除く。
薬に頼ることもそうだが人間の体は自ら治癒することができる。
高熱や炎症は覚悟の上だ、それでもやるしかないと言うようにAは心を決める。

「いいえ何も。
ありがとう助けてくれて。」
「けけっ礼には及ばねえよ。それに助けるっつうか、マンパワーだてめえは、」
「なるほど。」

相変わらず礼も弱みも見せないわけだが、瞳孔の揺れ具合から多少なりともこの再会に一人喜んでいる訳ではないと期待しても良さそうだ。
素直じゃないなと思いつつAは洗ってもらった足の傷や、顔の腫れ、首の痛みなどを堪えながら、すっと幹の方に背を預ける。
そしてぱらりと閉じていたはずのツリーのそれが開かれる。

「A、他に障りはないか?」

ドギマギしながらうわずっている声にAは首を傾げる。

「どうしちゃったの?丁寧すぎてびっくりだわ、大樹。」

恐る恐る伺うその姿勢にAは首を捻る。

「いやそのなんというか。」
「こいつはてめえのマッパに近い体担いでびびってるだけだ、察しろあほ、」
「ああ〜〜、ああ〜〜〜」

今更だが蔦と葉だけで覆われた体は確かに、申し訳が立たない。というか、それなら真正面に対峙しているお前はどうなんだというに千空を睨みつけるA。
視線で意図を感じとったらしい千空は、ケッと唾でも吐き散らかすように横を向いた。

「患者に余計なこと考えてどうするんだよ、痛まねえかとかそんなことしか考えてねえよ、ばか。」

ま、そう言う男だよなと言うようにAは真顔でそれを見つめる。

「それじゃあ一つ頼み事をさせてくれる?」
「あ?」

Aはこの火と乾燥させた植物らを借りてもいいかと尋ねた。

「別に借りなくていい、明日Aが補填してくれればそれで十分だ。何する気だ?」
「何も、ただ私が呼ぶまでは入って来ないで。」

どっかの御伽草子のような言葉を残して二人をツリーから追い出したAは、ごめんなさいと言いながら、植物の乾燥した繊維や、その綿の実を細々とした糸にすることから始めた。

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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イライザ | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年4月27日 23時

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