決着 ページ33
「?何持ってるんだ?」
「何も、ただの貢ぎもの。」
「??」
サルファ剤を手にした千空は首を傾げるだけだがとりあえず急がなければならない。
早足になりながら、村に到着した千空とA。
出迎えた長たちだが、千空の隣に見慣れない女がいたことに驚いていた。
「もう一人異邦人がいるとは聞いてたが、貴様は何者だ?」
「千空の昔馴染みです、それよりもルリさんを早く。」
「あ、ああ。」
呼ばれて現れたルリはごくりと緊張しながらも覚悟を決めた顔をしていた。
「A、ルリが飲み終わったらこれ持ってたのむ。」
渡されたビーカーにコクリと頷いた彼女は、持っていた包みをコハクに委ね、そっとルリの背後に回った。
そっと葉の先から差し出されたそれを嚥下したルリ、飲み込んだのを確認したAは、ビーカーを手にぴたりとルリの背中にビーカー越しに耳を当てた。
「ひえっ、」
突然の接触に驚いたルリだが、Aはそのまま続けた。
「いーって言ってみて。」
「へ、、あ、、、いいいいーーーーー」
誠意いっぱいのその声に、Aはスッと耳を澄ませた。
ヤギの鳴き声のような声に、Aは千空の顔を見上げ、肺炎よと告げた。
「了解。」
Aの方を見ながらこくんと頷いた千空に、ルリは驚きながらAと千空を交互に見比べた。
「あ、あなたたちは一体。」
「何者でもありませんよ、お姫様。」
そう言ってAはコハクに、包みの中身をルリに渡すように目配せした。
「あ、あのルリ姉、これをよかったら。」
中身が何かもわかっていないルリは首を傾げながら、それをパッと開くと、驚く勢いで目を見開いた。
「こ、これは、」
はらりとコハクの手からこぼれ落ちたものは、それこそ目が冴えるような、艶やかな衣装だった。
ここ、原始人のファッションにはやや不釣り合いではあるものの、全員の目にはそれが訳のわからない天女の衣にでも見えていたのだろう。
赤や、青、そして金色じみた黄の染色にって染め上げられたのは、一つの帯だった。
「悠久の彼方、私たちのご先祖さまは生糸と呼ばれるものから色を染め上げ、縦糸と横糸に分け、美しい衣装を仕立て上げました。
刺繍のような編み込みと、わずかな糸の盛り上がりを利用し、人肌に対してあまり負担をかけない、一つの織り方を編み出したのです。」
「あ、あああ。。。」
サルファ剤を飲み込んだことも忘れて、震える手つきでルリはその輝く布を手にした。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イライザ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年4月27日 23時