30 ページ30
声も音も立てない、衝動を限りなく抑え、足場を固く踏みしめてから素早くよみをつける。
たった一本しかない矢を構え、Aは前を睨みつけた。
「銀狼！」
行き過ぎた言葉はいらない、これ以上周囲の空気の流れが変わる前に、Aの手元の矢は、唸るように空気を切り裂いた。
ぎり的まで届く距離から放たれた矢は、ズドンッ！と重い音を立て、落ち掛けていたクロムの足元に突き刺さる。
「くっ。」
一瞬の足場、崩れるその瞬間、跳ね上がったその力はあっという間に対岸へと這い上がれたクロムと、それを助ける銀狼、千空を見た。
「ようやく原始人らしくなった。」
そう言って微笑んだ彼女は、対岸越しに睨んでくる目に冷や汗を垂らしながら、千空達と合流したのだった。
ーーー
「ったくあれほど危ねえ真似はするなって言って、てめえの耳はちくわか何かか？あああ？？？」
「わ、悪かったから引っ張らないでよ！」
あれからクロムに感謝され、銀狼には姉御と呼ばれかけ、千空からはお説教の嵐でAの耳は過重労働に耐え抜いていた。
耳たぶをわざわざ引っ張って怒鳴りつけるものだから、Aも殆に困っていたのだ。
叱られながらも彼女の手元はすらすらと動いていく。
「？？A何ってるんだ？」
「何って、いつまでマンパワーでいるつもりよ、いくらゲンが足止めしてるって言っても、これ以上はスピードが勝負かと思って、せめて設計図だけでも。」
広げられたものはなるほどと、千空が感心するくらいにはよくできていた。
あの化学大好き人間どもに渡したら飛びついてきそうだ。
「ああ、よくできてるがこれ人手いるな。少なくともサルファ剤で連中をこっちに取り込んでからだな。」
「よねえ。ま、取っておいても損はないでしょう。」
クルクルと丸められた和紙、その手をガシッと止めた千空は和紙を見ていた。
「ちょっと待て。計算がちょい違う、赤あるか？」
「何？朱を入れるの？無粋ね。」
「おい。」
「冗談よ冗談。」
くすりと笑った彼女に千空はちっと小さく舌打ちをした。
めんどくせえ女になったなと思いつつ、Aの服装が若干変わってきていることに気がついた。
「衣装変えたのか？」
「ええ流石にいつも同じやつを着回すわけにはいかないもの。
あなたのも仕立て直しましょうか？」
「あ、ああたのむ。」
特に断る理由もなかった千空はさせるがままにした。
身長は相変わらず千空と変わらないA。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
