覚悟 ページ29
淡々と言ってのけるA。
「ねえ怖くなかったの？帰れなくなるかもしれないのに。」
「怖くはあったけど風上や、風下はきちんと読んでいたわ。まあ後は運が良かった、のかな。」
銀狼に改めて言われると確かにと考え込んだA。
銀狼は黙ってAの姿を見てから、やっぱりさ、頭いかれてるよと言った。
「？何が？」
「だって、怖くないっておかしくないか？」
「何を言ってるの？怖いわよ。」
さらりと言ってのけるAに、は？と銀狼の顔が持ち上がる。だがAは淡々としていた。
「怖いという感情は大事よ。怪我をするときだってそう、痛いという感触は体の危険信号だもの。
何も恐れることはないし、その危険信号のおかげで私たちは身を守れているのよ。」
「ならどうして危険だってわかってるのに、行けるわけ？まるで俺が臆病者じゃないか。」
涙声で震える銀狼に、ああとAは何かに気がついた。
この間からずっと言われている生き急ぐというのがAにはどうもしっくり来ていなかった。けどその感触は彼が今抱えている心情と真逆なのだ。
「臆病者が悪いといつ誰が決めつけたの？
私は逆に生き急ぎすぎってよく責めてられたわ。
でも当然の真理よね。結局のところ長く生き残ることが大事なんだから。どれだけ強くてもすぐに死んでしまったら意味ないもの。」
Aの言葉におどおどする金狼銀狼、そうこうしていると背後からコハクとカセキの爺さんが。その手には久しく見ていなかった、きらりと光る弓状のものが存在している。
「ちょうどいいわね。」
二人が出してくれたものを、Aはゆるりと手にとり、肩幅に足を開く。
重心と呼吸を整え、村にあった矢を番え、ギリギリと強く引き絞った。
思い出せ、あの時の感触を。
Aは狙いを定めてからパシッと、手を離した。引き絞った矢の先は、鋭く落ちていく葉を捉え、幹に突き立てた。
ひえと声が漏れるが、Aは鋭く前を睨みつけた。
「行こう、気になっているのなら、案内するから。」
そう言ってニコッと笑ったAに、銀狼は慌てて着いて行った。
ーーー
辿り着いた先には、
「絵に描いたような危険シーンじゃない！
銀狼は、そのままストレートに彼らの元に、私は対岸に行くから。」
「ええ？？！！なんて！」
二手に分かれたAは、底下駄の力を借り、トントンと怖がらずに進んでいく。
解毒用のガスマスクを持たないAは、風の読みと空気より重い奴らの性質を利用するしかない。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
