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「なんと。自分の背丈よりも高いものを使うのか。」
「ええ、矢の長さは規定通りなら80だからこれくらいね。」
手の長さで示しながら、顔を上げたAに、コハクの目はキラキラとしていた。
「カセキ!作れそうか!」
「かかかっ、村にあるものを使うなら瞬殺じゃぞ!」
力瘤を作ってニコッと笑うカセキの爺さんに、Aはああ〜〜こりゃ楽しんでるなと遠い目をしていた。そういえば地図作りに夢中で、どこかひと所に腰を据えてしっかりと準備を整えていなかったかもしれない。呆然としているとおい、と短く声をかけられた。
「あなたは金狼さん?」
「ああ、良ければ軽く手合わせ願えないか?」
「いいの?私は村の外の人間だし、手合わせできるほどの実力も持っていないけれど。」
Aは金狼が持っていた練習用の槍と金狼を見比べる。
何か察したらしい金狼は面目ない、というように頭を擦ってから、そっと手合わせ用の槍をおいた。
そして握手したその刹那。
「?」
一瞬だが向かい合ったはずの金狼の手がかすった。
つかみ損ねたそれを、Aは慌てて拾い、笑顔を作った。
「よろしく。」
「ああ。」
やっぱり、とAは確信した、彼の視力は彼の身体能力に合っていない。正確には両眼の視力がはちゃめちゃなことになっているかもしれない。
これでは戦いも何もない。
「ねえ、その目。」
「っ、な、なんだ。」
「距離感を掴めていないんじゃない?千空に相談した?」
「っ誰に聞いた!銀狼か?俺はそんなことはない。」
せっかく握っていた手をぶんっと勢いよく離してしまった銀狼は、Aをきっと睨み上げた。
だがAは怖くない。
それよりも彼の目の方が問題だ、一歩踏み込みかけたそのときだ、銀狼!!と怒号のように叫ぶ金狼の声。
「へ?え??な、なに?」
「ああ〜Aちゃんってばな〜んで言っちゃうかな。」
「え。」
背後の茂みからガサッと姿を現したのは先ほど金狼に声高々に呼ばれていた、銀狼。
「私は何も。」
「わかってるって、どうせあれでしょ、千空と一緒で妖術でしょ。」
「妖術も何も見ていればわかるわ、」
「ふーん。」
上から下までじろじろみやがる失礼千万な男に、あのねえとキレそうになっていると。ねえと神妙な顔で聞いてきた銀狼。
「Aちゃんが行ったっていう硫酸の湖、どんな感じだった?」
「窪地で、空気が立ち込める地理になっていて、岩石は脆く、生き物は一切生きていなかったわ。」
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イライザ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年4月27日 23時