知らない世界で ページ3
二、三日暮らしてみてわかったことは、この世界がAにとって全く未知の領域であること。
そして数千年前に日本が経験した文明とやらが発達する前の世界と言うことに。
Aは、ツタや葉で体を覆いながら急所を隠すことに専念した。
男性と違ってここだけはと言う急所はないが、人間の急所は大体体の中心によっている。
脳天から、喉仏、鎖骨、胸骨のすぐ下である鳩尾、脇腹、股下、くるぶし、足裏、関節の節々まで、人間の皮膚は弱い。
だから着衣や靴で身を守らなければならない。
足の裏に関しては半日歩いただけでもう足の裏がズルむけになりそうだった。
「ああ、ひどいざまだ。」
災害時も足裏に怪我をして動けないまま足手纏いになることはザラにある。
だから靴や靴下は必須なのだが、今のAにはそれがない。
化膿しないように怪我をした部分を濡れた葉でそっと覆いながら、ゆるりと蔦で巻く。
雑菌が入ってくれば死に直結する、今自分を守れるのは自分だけだと強く言い聞かせたAは日が傾いてきた空を見ながら蹲った。
「野宿ねこれは、」
人生経験した中で一度もこんなことはない。
何だったらこの時間は部屋のあかりをつけ、本を読み耽っていたはずだ。
思い出すだけ無駄な過去の話は忘れ去り、ブルリと、Aの素肌に夜風が触れる。
「はあ、」
夜は体が冷えに耐えられないと思っていたが、何か温かいものが体に触れた。
「あっ、」
それは先程Aの顔を舐めていた牝鹿。
Aの体から同じメスの性別でも嗅ぎ取ったのだろうか、暖を取り合うように身を寄せ合う雌鹿にAは動揺が隠せなかったが、とにかく今は暴れないことを優先とした。
そのまま無防備にもうとうととしていると、ふと何かの匂いが漂った。
視覚が閉ざされた今、聴覚や嗅覚が敏感なのだろう。
体が反応しているのはわかる、だが、これは明らかに、この時代にしていい匂いでは、ない気がする。
「？まさか。」
Aが起き上がったタイミングで、雌鹿は逃げてしまったらしい。
あの脚力があればどこへなりとでもいけるだろう、いや今はその話は置いておいて。
「どうして燃える匂いが。」
山火事でも起きたか？と不安げになりながら、恐る恐る歩く。
真っ暗が今一度どう言うものか思い知っているAは心が恐ろしさで震えた。
一寸先は闇、まさにそんな時間である。
震える指先と息が同時に動き、Aは擦り傷を作りながら、匂いと耳を頼りに歩を進ませる。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
