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が、不運というのは存外どこにでも転がっているようで、夜明けに起きたAを不審に思い跡をつけていた千空は、Aの躊躇ない動作に咄嗟に身を隠した。
「あ、、いつ、ちったあ警戒しろ、」
わかってはいる、頭でわかっていても、耳が赤くなった彼は周囲が霧によってぼやかされていた事実に感謝した。
おかげでこの脳天をどっかにぶっ叩いて、記憶ごと吹っ飛ばせようかと思っていたくらいだ。
記憶の片隅なんかほの白い肌がチラついたような気がするが、それは気のせいだと思考ごと放棄する千空。
「つうか、なんであいつ肌焼けねえんだ?」
純粋な疑問だが、直射日光を浴びる機会だって何度もあった。
Aの普段着はまるで平安時代の人間のような衣に近かった。ズボンに出来るだけ強度のある糸や針が作れなかったので、スリットをあちこちに入れて足は動かしやすそうにしている。ゆえに一切素肌を表に出さないという状態ではないのだが、わかりやすい日焼けがどこにもないのは、少々引っかかっていた。
「いや、ていうかそこじゃねえだろ、」
こめかみ近くの髪の毛をガシガシとかいては、びしゃびしゃと立つ水音に思わず耳を塞ぎたくなる。
「はあ、早くしろよなあ。」
何もないふりをしながらそう考えていると、ふと音が静かになった。
まさか、川に足でも取られたか?
人が水面に沈む時意外と音は立たないらしい、おかげで溺れたことにすら気づかないというのはざらにある話だ。
「A!」
弾かれたように外に出れば、何?と飛び出た幹とは反対側の方向からAが顔を覗かせた。
「貴方も顔を洗いにきたんでしょう?ごめんなさい、場所占領して。
石鹸は携帯してるの?」
「あ。ああ。」
そら、自作者が他人にもたせて自分に持たせていなかったらやばいだろ、ということはあえて言わないことにした。
そしてそれは正しい選択とも取れた。
「そう、じゃあ私は先にも取ってるから。
川の水面にちょっとした波立っているところは気をつけて、意外と深いから。」
と足取り軽やかに立ち去った彼女と川を見返した千空は、はああ〜〜〜〜と深いため息をついた。
そして心ばかりの気遣いを持って、彼女が体を洗っていた場所より川上で顔と体を洗った。
そしてAたちが向かった先は、まさに原始的な村そのものだった。
橋渡しで繋がれた村たちは確かに地理的に敵からの攻撃に耐えうるようになっていた。
「なるほど、これは多少なりとも期待していいかもしれない。」
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イライザ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年4月27日 23時