誰にも知られず ページ1
ふとした時に思い出すのは、ツバメがポトリと落ちる音。
Aたち人類の指針はあっと言う間に変わってしまった。
「あら？」
白衣を身につけ、気分転換に外に出ていたAは無造作にゆいあげた髪を緩やかに流した。
目の前にあるものが幻覚でなければAが目にしているそれは、とても美しい造形の形をしている。
「珍しいわね。こんなのがここに落ちているなんて。」
ツバメ彫刻のそれを持ち上げたAは、目を細め、見つめた。
繊細な形、微細な神経のはわせ方まで、まるで飛んでいる姿をそのまま3Dプリンターで立体にしたかのような美しさだ。
人間こういう微細な違いを捉えられる人はいるらしい、Aは持ち合わせていないが。
「展示室への荷台の途中に落としたのかしら。」
写メで撮り、取り敢えずこれに似たものを飾っている美術品がないかどうか検索をかける。
が見当たらない。
「？？どうなってるの？」
てっきり何かの造形品の一部が落っこちてしまったのかと思い、念のため、SNSにも呼びかけてみたがそれらしい反応はない。
代わりに、見慣れた彼からは連絡が来た。
【おいA、それどこで見かけた。】
それといきなり指示語を出されても困る。
彼とのトークを遡っても3日前だ。それに該当するものはない、と言うことは。
【察しが悪いな、手に持ってるツバメのやつだよ】
【家の前よ、研究対象なら持っていきましょうか？】
「いや、俺が直にもらう。」
慌てて降りてきたらしい彼は、学校からの帰りのまま机に向かっていたらしい。
ガチャリと扉を開けた千空はAの手から鮮やかにそれを掻っ攫った。
「まだ残ってたか、助かるぜ。」
へへへと不気味な笑い声をあげて立ち去った彼を、黙って見送ったA。
ガチャリと閉じた扉を見送った彼女は、やれやれと首を振る。
彼の名前は石神千空、生粋の科学者。
そして彼に名前を呼ばれたAとは道路を挟んだ真向かいに家を持つ、ただの昔馴染み。
散歩を終えたAが家の中に入ろうと歩きかけると、ガラガラと窓が開け放たれる。
「おい、」
「ん？」
この白衣は千空からの贈り物に袖を通していた彼女はひらりと手を振り、それに反面してニヤリと笑った男。
「気分転換はできてんのか？
A。」
「まあね。」
Aのぼんやりとした目に、見つめ返した千空。
「たまにはこっちにも寄れよ。」
「わかってるよ。」
ニコッと微笑んだ彼女は、そのまま自室へと入っていった。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、そう言っていただけるのがとても嬉しいです。 世界観に入り込めるというのは、多分夢小説を描く人誰もが描く人誰もが欲しい言葉だと思います。これからもみていただけるように、精進しますね。いつもありがとうございます。 (2021年4月28日 8時) (
レス) id: d70a88eee0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。以前から感じていた事があります。それは、世界観に本当に入ったような気持ちで、夢小説を読めれる魅力があるイライザさんの小説には、あると思います。夢主が、研究者的なキャラで好みでした。 (2021年4月28日 6時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イライザ | 作者ホームページ：
作成日時：2021年4月27日 23時
