ほ 野暮は厳禁 ページ6
「福本さん、手を動かしてください。」
「大丈夫だ動かしてる。」
「…ならいいですけど、」
「Aこそ手元をしっかり見ろ。」
「はいはい。」
合いの手の如く淡々とした会話。
これは世間一般ではなんと呼ぶのか。
ふとくだらない疑問を感じたが、考える必要もないな、と福本は自分に向かってかぶりを振る。
福本にとってこの時間は、彼女をほんの少し、一人じめ出来る穏やかな時間だからこそ気に入っている。
それ以上考えることも望むことも必要ない。
「福本、少し味見をしてください。」
「ん?」
差し出されたのは菜箸で挟まれた春野菜の炒め物。
福本からすればちょっとした不意打ちだったが、まあいいかと甘んじて食べようとした時。
ドアが予告なく開いて、出てきたのは寝癖だらけの神永。
欠伸を噛み殺した神永はん?と言う表情の後、固まっているAと福本、そして二人の間にあるモノを見て、一言。
「嫁と姑?」
「は?」
すかさず不機嫌そうに返事を返したのはA。
まさしく野暮な発言。
Aは自分に不必要に絡んでくる神永に、警戒をしている。
そのことを悟った福本は、Aが臨戦状態に入る前に手を打った。
Aの手を掴んで菜箸ごと自分に向けさせ、パクッと炒め物を遠慮もせずに頂いた。
あ、とどちらかの声が響く。
「福本…」
「ん、炒め具合はちょうどいいが、もう少し胡椒がいるな。」
「…わかりました。」
呆然と福本を見つめた後、上ずった声を隠すように、さささっと手を動かしたA。
野暮な発言をした神永など完全に忘れている。
そんなAに不服そうに目を向けた後、福本を軽く睨んだ神永は少し口元を歪めていた。
そんな神永を軽く横目に見てから、満足そうに手を動かす福本。
「あのさあ、」
不服そうに声を上げた神永が、何か言ってやろうと声を上げた時、ドヤドヤと人の気配。
一拍置く前に部屋に入ってきたのは他のD機関の面子。
計ったようなタイミングに臍を噛んだ神永、そして反対に連中の登場に、嬉しそうなAは微笑みながらこう言った。
「皆さんおはようございます。」
D機関の華型は今日も美しく微笑む。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時