▽mission29 ページ30
*
雑談を始めた大人達をちらっと見て哀ちゃんが私の裾をちょちょいと引いた。
「ん?どしたの」
「耳を貸して」
「へ?」
「いいから!」
哀ちゃんは少し切羽詰まっているようにも見え、そして思い出す。
そうか、哀ちゃんは沖矢さんを警戒対象として見てるんだった。
首を傾げる振りをして耳を近付ける。
「……あなた、よっぽどのことがないならあの男にはもう近付かない方がいいわよ」
もちろん私にとっての沖矢さんは、ただ頭の良い大学院生なので不思議そうに聞き返す。
「なんで?」
「なんでもよ!」
少し叫んだ哀ちゃんが我に帰り、恐る恐る前を伺ってヒッと小さく息を呑んだ。
釣られて前を向くと沖矢さんがミラー越しにバッチリこちらを見ている。
ヒエッ……………なにこれこわ………………
小さく震えだした哀ちゃんが私の服をギュッと掴む。
え?なにこの可愛い生物。
思わずその手を取って頭を撫でる。
「え?何……」
「だ〜いじょうぶですよ〜〜な〜〜んもこわくないですよ〜〜〜〜」
「やめて、子どもじゃないのよ」
「小1は立派な子どもですぅ〜〜〜〜」
不意を突かれたのか、頰を染めてそっぽを向いた哀ちゃんに頰が緩む。
「Aさん」
調子に乗って両手で頭を撫でてやろうと手を伸ばしかけたところで鋭い声が飛んできた。
沖矢さんだ。
「…………着きましたよ」
「あれっほんとだ」
外を見ればいつの間にかうちの前。
「それじゃ哀ちゃん、またね」
「……ええ、それじゃ」
哀ちゃんに手を振って車を降りる。
運転席の横に立って沖矢さんにお礼を言う。
「すみません、わざわざありがとうございました」
「いえいえ、お気になさらず」
「またお礼に伺いますね」
「……ええ、お待ちしています」
走り去っていくスバルを見送って、私は大きなため息をついた。
*
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Sun._raise(プロフ) - やばい、ハマった (2022年2月1日 0時) (レス) @page49 id: 276bbde748 (このIDを非表示/違反報告)
どぅわああああ - mission47、主人公と博士は夜想曲の帰りのスバルさんに乗っているので初めましてではないですね。とても面白いので続編以降も楽しみです。 (2021年7月14日 1時) (レス) id: 04b80a02c7 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! (2021年7月13日 13時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 自転車事故のくだりめっちゃ爆笑しました!この作品大好きです! (2021年4月25日 22時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
よる - まだ設定しか見てないけど名前入れたら本名になって驚き(゚Д゚) (2020年4月22日 23時) (レス) id: c5f0e73031 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:斗 | 作成日時:2019年4月13日 23時