九想 ページ10
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家村の元に行く前に
籠の中に閉じ込められる前に
一度だけ
外の世界が見たかったの・・・
***
走った
気づかれないように
行先を告げた
大通りでタクシーを停めて
驚きの顔をされた
お札を一枚渡すと黙って向かった
深夜なのに・・・
煌々と燃やされている
かがり火・たき火
赤く照らされた『 家族 』たちの顔
現れた『 余所者 』に奇異の視線
それらを浴びながら、少しずつ奥に進む
突然
目の前に降り立った一羽の鳥
「 アンタ確か 」
「 あなたはルードボーイズの・・・ 」
「 ピーだ。 無名街に何の用だ？ 」
「 スモーキーに話があるの 」
雅貴が言ってたコトを確かめたい
でもピーは会わせてくれるかな？
「 アンタはスモーキーの『 気に入り 』だ。 いいぜ、ついてこい 」
人差し指でこっちだと案内する
更に更に奥まった
人目につかない建物から・・・
「 うっ、ゴホッ・・グハ！ 」
「 お、お兄ちゃん！！ 」
苦しそうに咳き込む声
ポタポタと・・・滴り落ちる音
「 チッ！ また発作か 」
「 発作？ 」
「 ああ、アンタは見たことないのか 」
カーテンで仕切られた部屋から
血だらけのタオルと洗面器を持ったララが出てきた
「 えっ？ アンタどうして？ 」
「 リリのことで・・・ 」
「 ふーん。 悪いけど、これ洗ってくるから、お兄ちゃんについててくれない？ 」
そう言われてカーテンの奥に押し込まれた
「 ゼェ・・コホッ 」
「 ス、スモーキー？ 」
「 ハァ・・！！ 」
『 リリか？ 』って弱々しく呟かれても頷けない
今のわたしには、
「 こんなに具合が悪いのに、あの時来てくれたの？ 」
「 家族が攫われたんだ。 当然だろう？ 」
「 わたしが本当のリリじゃないかも知れないのに？ 」
「 そんな自信なさげに俺を見る顔なんて昔のままなのにな 」
ゴロンと仰向けに横たわる体
思わず節くれだった手を握りしめる
「 ！！ 」
ありがとうって言おうとしたのに、わたしの体はスモーキーに引き寄せられて
「 しばらくこのまま 」
枯れ木のような腕が抱きしめてきた
「 リリ 」
そう、わたしがリリだったらいいのに
「 あのね、スモーキー 」
***
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作者名：姫保
| 作成日時：2016年6月4日 23時
