四哀 ページ28
***
「 なに？ そのグッタリした子供 」
「 セイラ、口わりーな。 この娘は九龍の“ 華 ”、Aちゃんです 」
「 一目ぼれしたバーニーが攫ってきました 」
「 パール、口を慎め。 あの方にお願いしてお預かりした大切な客人だ 」
「 劉の言う通りだ 」
「 アイス、その顔恐い！！ 」
ふざけた会話と真面目な会話
国際色豊かな顔ぶれがわたしを取り囲む
ガラス張りの広い部屋
その奥にあるビロードのソファに横たえられた
後ろの壁には大きな天使の絵が飾られている
この建物の乱痴気な雰囲気とは真逆の荘厳さで・・・
「 まだ具合悪い？
俺、なんかサッパリするもの持ってくる 」
「 フルーツとかアイスがいいかもね 」
「 セイラ、強くてもさすが女♪ 」
上機嫌で部屋から出て行ったバーニー
続いて
「 ナインとステージでかましてくる 」
「 Yeah！ 」
肩を組みながら出て行くアイスとパール
残ったのは不機嫌な女の人ともう一人
「 子供が好むものを言っただけなのにね 」
ため息まじりに発した棘のある言葉
わたしも元気になったら言ってやりたい
皆、わたしを攫い過ぎ←１０歳の頃から何度も何度も
口を尖らせながら、ラテン系の美しい人を見上げた
「 強い眼をするのね。 従順な子供だと思っていたのに 」
「 えっ？ 」
「 アンタになら従ってあげてもいいか 」
眉間の皺が消える
笑顔で更に美しさを増した人が、わたしを真っすぐ見つめる
音のない時間を動かすように、もう一人が言葉を発した
「 気分はどうですか？ 華公主 」
―――
中華系の姿と名を持ち、わたしを“ 華公主 ”と呼ぶのは・・・
ノボルが来るまで、わたしの教育係だった・・・
「 あのリュウ？ 」
「 覚えておられましたか 」
***
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作者名：姫保
| 作成日時：2016年6月4日 23時
