十憂 ページ23
・
極道に世の理は必要ない
極道に禁忌なぞ存在せんわ
特に九龍はの、儂が白と言えば黒さえ白くなる
要はこの趨勢を保つ為に“ 覇者 ”と“ 華 ”を次世代に遺せれば良いのじゃ
より強くて美しい者を・・・
その為なら兄妹が添うことも何ら厭うことではないぞ
***
「 雨宮広斗を選んだのは、それだけではない 」
「 どういうこと? 」
「 嬢の望みを叶えてやるためでもある
九龍の世界でなら、誰の目をはばかることなくあの男と生きていけるぞ、ん? 」
――― 広斗ト生キタイ! ―――
翁はわたしの言葉を逆手にとって、
己の庇護下の元、近親愛を貫けと言っている
だって、あの時は広斗が兄だなんて知らなかったのに・・・
「 ひ・・どい 」
「 酷いだと? 」
「 わたしから家族を取り上げて、記憶を取り上げて、
挙句、“ 華 ”として生きろ? “ 覇者 ”のご褒美になれ?
その為なら兄妹でも構わない?
こんな酷い要求おかしいよ!!
翁と菊志野は、わたしのママにも九龍の都合を押し付けてきたの?
ねえ、あなたたちの雪志野はパパでなければ誰の“ 華 ”になる筈だったの? 」
「 ・・・お前は何も知る必要はない。 ただ九龍の“ 華 ”であればよい 」
「 別に雨宮広斗でなくても、“ 覇者 ”に名乗りを上げる男は数多おりますよ 」
「 そんなこと言ってるんじゃないの!! 」
翁は九龍の存続を果たす為・・・
菊志野は雨宮への恨みをはらす為・・・
わたしの運命がどんなに捻じ曲げられようと構わないんだ
「 二人とも・・・き、嫌い、大っ嫌い!! 」
「 嬢? 」 「 嬢さま? 」
「 返してよ、わたしが失った五年間を返して!! 」
何食わぬ顔でわたしを欺いてきた偽りの年月を
雨宮の兄たちと幸せに過ごせたはずの日々を
「 二人が、憎い・・よ・・・ 」
「 嫌われようと憎まれようと、お前は放さぬ 」
何を言っても翁たちにわたしの言葉は通じない
受け止められない感情のまま、独り茶室を飛び出した
畳に茶扇子を投げつけて・・・
『 お行儀の悪い 』が口癖の菊志野が何も言わなかった
足袋のまま降り立った庭
金木犀の十字花に伸ばす手
「 病み上がりにそのお姿では体に障りますよ 」
黒いマフラーが肩を包んだ
***
592人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:姫保 | 作成日時:2016年6月4日 23時