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九憂 ページ22

***





まるで鏡を見ているようだった


同じ服


同じ靴


同じシニヨン


後れ毛を留めたヘアピンまでも・・・





***





「 無名街で物色したら丁度手頃な子供がおってのう

  菊志野の眼鏡にも(かな)ったんで連れ去ったのじゃ 」


「 貴女と同じ姿にした後、貴女を待ち伏せして・・・ 」


「 まさかあの状況で抵抗して、逃げ出すとは思わなんだ

  流石、九条の龍の血というか、雨宮の鷹の血というか・・・ 」





クックッと喉を鳴らして思い出し笑いをする翁





「 のう嬢。 聞き分けの悪い子供には躾が必要だと思わぬか? 」


「 翁? 」


「 替え玉にした子供はリリと言ったか?

  ワザと残酷に嬢の前で殺させた。 儂らに・・・ 」


「 そう、妾たちに逆らうとどうなるか、身を持って知っていただくためにです 」


「 そっくりな姿のリリを通して、お前は殺される瞬間を疑似体験したのじゃ

  これで従順になるかと思いきや、衝撃の余り全ての記憶を失ってしまった 」


「 こちらにとっては好都合でしたけどね

  何も知らない無垢な貴女が手に入ったのですから・・・ 」





わたしをあの三人から引き離すためだけ?


そのためだけにリリは犠牲になったの?





「 翁たちは・・・人を、命をなんだと思っているの? 」


「 儂ら以外はみな道具じゃ 」


「 道具じゃないよ!! 人だよ!!

  わたしにもリリにも、突然いなくなったら悲しむ家族がいるんだよ? 」


「 ・・・それは雪志野を失った妾たちのようにですか? 」


「 !! 」


「 因果応報じゃ。 先に雨宮が儂らから娘を奪った 」

 
「 ちが・・う。 パパとママは最高の恋をしたって・・・ 」





――― 人生最初デ最後、最高ノ恋ヲシタ ―――





わたしは広斗や雅貴が言ってたパパを信じたい


翁たちみたいに理不尽に攫ったわけじゃないのに・・・





「 それが極道だ。 欲すれば手段は選ばぬわ 」





雪志野・・・ママはこんな世界でずっと暮らしていたの?





「 翁、教えて? 」


「 何をじゃ? 」





二つ目の疑問





「 なぜ兄妹と知ってて“ 覇者 ”に広斗を指名したの? 」


「 ・・・わからぬか 」





――― 極道であるが故 ―――





***

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作者名:姫保 | 作成日時:2016年6月4日 23時

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