華戦～HANAIKUSA～三章 (ページ21)

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八憂ページ21

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【 ○○バレエコンクール・ジュニアの部・第一位・雨宮Aさん】

新聞の地方欄の記事

雪志野が消えてから止まった歳月が、妾の中で再び動き出した

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「白黒の小さな写真だったけれど、すぐに確信したわ

　この少女は雪志野の娘だって

　満面の笑顔は、幼い頃のあの子そっくりで・・・」

五年前の新聞の切り抜きをわたしに見せた菊志野

載っているのは確かに１０歳のわたし

大好きなバレエで初めて賞を貰って、喜びの頂点にいた瞬間

「いなくなってから１０年余り、全く手がかりがなかったのじゃ

　我が九龍の情報網に全く引っかからずにのう

　じゃが・・・雨宮の名でそれも納得がいった

　雪志野の相手があの(・・)雨宮だとは、ちと驚いたが」

「大学の帰り道、男が車に雪志野を乗せたという情報を最後に足跡が途絶えたの」

「その相手がパパだってこと？」

「そうじゃ

　雨宮の家は代々国双地区の実力者での

　財力と各界への人脈で、儂ら極道と対等に渡り合える立場だった

　雪志野の存在を世間から隠し、秘密裡に結婚してても不思議ではない」

新聞記事を元に、翁たちはわたしの身辺を調べ上げ、

雪志野がすでに死んでいること

パパも一昨年他界したことを知った

そして・・・近々わたしがバレエ留学することも

「貴女の存在を知った以上、離れて生きることなんて出来なかった

　どうしても一緒に暮らしたい

　ただ攫うだけなら簡単にできる
　
　でも貴女の兄はアノ雨宮兄弟でしょ？
　
　失踪なら地の果てまで探そうとするのは容易に想像できた」

だから・・・と翁に目配せする菊志野

「うむ、お前を死んだことにして、兄達が諦めるように仕組んだのじゃ」

「えっ？」

「背格好の似た子供を用意して、お前の代りに死んで貰った」

「！！」

バレエ教室の帰り、突然連れ込まれた車内

そこにはもう一人女の子がいた

『お兄ちゃん、助けて』って泣きながら・・・

二人が連れて行かれたのは、あの路地裏

先にその子だけ降ろされた

大きなナイフが襲おうとするから、思わず車から飛び出し大きな背中に体当たりする

『逃げよう！』って懸命にその子の手を引っ張った

もうすぐ・・・疑問の一つが解ける

隠れた物陰で聞いた名前は？
　

――― リリ ―――

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