四憂 ページ17
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――― このまま無名街でリリとして生きろよ ―――
目の前のコイツと離れたくなくて告げた
――― わたしが原因でリリが死んだかも知れないのに？ ―――
目の前のコイツは離れようとして告げた
俺が“ 華 ”を手に入れるために目を塞ごうとした事実
コイツはそれを赦さなかった
俺にも
己にも
・
「 おっ、戻ったか♪ 広斗、A 」
家に入った俺に目もくれず、テーブルに広げたパンフレットに目を通す
っていうか、妹だと確信した途端、Aって呼び捨てかよ
「 国双地区の家をリフォームしようと思って・・・
ほら、各住宅メーカーからイロイロ取り寄せてみた 」
「 はあ？ 」
「 このガレージハウスだとAの部屋足んないし、
国双の家には部屋はあるけど、１０歳の頃のガキっぽい内装のまんまだし、
だから女の子が好きそうな、カントリー風とかプリンセス風とか良くない？ 」
パンフから目を離さずペラペラ喋り続ける兄・雅貴
「 ・・・いねーよ 」
「 ん〜、なんか言った広斗？ 」
「 だからAはいねーんだって！！ 」
「 ああ"っ？ 」
顔だけ振り返り、やっと俺に視線を向ける
「 探しに行ったんだよな？ 」
「 ああ、無名街で見つけた 」
「 なら、なんで？ 」
「 どーやっても、妹に見れねーんだよ！！
なあ雅貴、軽蔑するか？
このまま俺の女として生きろって言ったんだ
そしたらアイツ、『 できない 』って、『 出て行く 』って
それが我慢ならなくて・・・ 」
「 まさか無理矢理？ 」
「 ・・・ 」
ドカッ！！
頬に雅貴の拳が入る
「 親父、妹、兄貴・・・次々と失ってずっと虚しかったろ？
それが死んだと思っていたAが生きてて戻って来たってのに・・・ 」
「 ま・・さ 」
「 なあ広斗。 お前、お兄ちゃんから
「 ！！ 」
雅貴の握りしめた拳が涙で濡れる
二人っきりの孤独を癒した存在を失った絶望感で
「 お前とAの心の整理がつくまで、
ＳＷＯＲＤ地区を離れるつもりだった 」
――― 兄妹として育った家で過ごすために ―――
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作者名：姫保
| 作成日時：2016年6月4日 23時
