十想 ページ11
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雪の願い
雪の望み
私が叶えなければ
歯車は狂わなかった・・・
***
「 ありがとう 」
「 ううん、やっと落ち着いたね 」
発作が治まったスモーキーが規則正しい寝息をたてる
スモーキーはわたしの手を離さなかった
身体が痛む度
血を吐く度
ソレに耐えるように強く握りしめてきた蒼白い手
「 ・・・顔色悪いよ。 疲れた? 」
わたしを心配してくれるララ
でも
わたしは心配される資格なんてない
「 もう朝だし帰りなよ。 さっきタケシに連絡頼んだから 」
「 えっ? 連絡って・・・ 」
「 雨宮広斗。 もうすぐ来ると思うよ 」
嫌だ
会いたくない
会ってはいけない
「 ララ、お願いがあるの 」
ララは不思議そうにわたしを見たけど、
何も言わないで『 お願い 』を聞いてくれた
鈍色の空
銀糸の雨
ザーザー
フードをスッポリ被って寒さをしのぐ
パシャパシャ
でこぼこ路面にできた水たまりをよける
雨色に滲む無名街に
不似合いなバイク音が響いてきた
ダイジョウブ
だいじょうぶ
大丈夫
ほら
キヅカナイ
きづかない
気づかない
わたしのスグ横を躊躇せずに走り去った
・・・数秒後
背後でブレーキ音が聞こえる
と同時に駆け出した
水の跳ねる音が二つ重なる
なんで?
なぜこんな視界の悪い中でも見つけちゃうの?
ララと服まで取り替えたのに
今のわたしは無名街の人間にしか見えないでしょ?
なのに・・・
いとも簡単にわたしを捕まえる
いとも簡単にわたしは囚われる
「 逃げんな 」
「 離して!! 」
わたしはこの腕の中にいる資格なんてない
スモーキーから聞いた真実があるから
「 ・・・チィにい? 」
「 A? 」
「 わたし達、兄妹なんでしょ? 」
広斗をチィにいなんて呼んだ記憶はない
でもこの身体は・・・
――― ねえ、スモーキー。 リリはバレエを習ってた? ―――
――― いや、やってねぇ。 体は硬いわ、足は遅えーわ、鈍くさかったな ―――
リリを記憶していない
***
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作者名:姫保 | 作成日時:2016年6月4日 23時