三華 ページ26
***
もう一人のAが亡くなった場所から戻ってすぐ
『 髪を切るぞ 』って広斗に言われた
驚いたけど嫌ではなかった
腰まで伸ばした髪はわたしの意思ではなかったもの
ずっと着せられていた着物もそう
きっと翁と菊志野がわたしの自由を封じるためにしたんだ
苦しい帯も長い髪も邪魔で邪魔で仕方なかった
だから笑って『 うん 』って答えたよ
シャキッ！
肩の辺りから鋏が入ってハラハラ落ちた黒い鎖
一瞬で頭が軽くなった
♪♪〜♪
広斗の鼻歌と鋏のリズムが一緒
二つのリズムが重なる中、ドンドン鎖が落ちていく
そして・・・
「 広斗〜、これでいいか？ 」
「 おう 」
髪を切ってる途中で出かけた雅貴が戻ってきた
手には黄色い箱
『 これで最後の仕上げだ 』って二人でペタペタわたしの頭に塗りだした
なんか・・・ずっと動かないで椅子に座ったまま
厭きてきたけどジッと我慢した
途中でウトウトしたけど・・・
「 よし出来た！ 」
洗面台で髪を洗われてドライヤーで髪を乾かしてもらうと・・・
「 見てごらん、Aちゃん 」
雅貴がわたしに鏡を渡した
「 ・・・ダレ？ 」
映っていたのは金髪でショートボブの女の子
今までのわたしじゃない
「 成功だな 」
「 これなら知り合いが見ても、お前だってバレないだろ？ 」
スゴイ！
すごい！
凄い！！！
「 ありがとう、広斗！ 嬉しい！ 」
「 気に入ったか？ 」
「 うん！ 名前を貰ったのだって嬉しかったのに・・・ 」
「 大袈裟だ 」
「 全然！ だって、わたしの嫌なもの全部消してくれたんだよ 」
重い髪もきつい着物も全部捨ててくれた
広斗は名前の次に・・・
新しい姿をわたしにくれた
***
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作者名：姫保
| 作成日時：2016年2月4日 2時
