第三七訓 ページ37
「…ごめんね、私はあなたの事もうなんとも思ってない。好きとか、嫌いだとか。父様がどれだけひどい人かは私は知らないけど…嫌いな人との子供を愛そうだなんて、私があなたの立場でも思わないもの」
その言葉に嘘、偽りはない。
殺気も愛情も、感情ですら。
「…本当はもう忘れるつもりだった。ずっと刀剣たちと生きていこうって。私の、刀たちと」
ばっと、両手を広げる。
女はすっと視線をずらす。
Aの後ろには確実に自分へと殺意を向けた神がこちらへ牙を向けて立っている。
「あの日、私に負けた母様と岩融を見逃してからね、そう思ったの」
ずらっと、ただ私を見つめて。
目、目、目、目、全てがこちを見つめている。
「…だけどやっぱり駄目みたい。気付いたらあの日の事を考えているの。初めて人を刺した感触も、裏切られた心苦しさも、全部!」
Aの初めて聞いたその叫び声に、ぞっと背中を走った電流のようなそれを気づかないふりをして、女は口を摘むんだ。
「…だからさ、やりたい事があって。折角、久々に負け犬の逃げ腰の母様と出会えたから」
岩融がぐっと力を込めたのがわかる。
それでも主の手前、なんとか抑えたようだ。
Aは岩融の事など気にせず言葉を紡いだ。
「決闘をしましょう」
「…は?」
Aの言葉に女は目を見開く。
どころか、その場のもの全員が。
「簡単よ、勝ったほうが生き残って、負けたほうが死ぬ」
「何よそれ、そんなの」
「そうね、理不尽よね。だって母様は神様で、私は所詮人間ですし」
きゅい、と軽く小太刀を振るう。
空を切ったその刃はAの足元へ突き刺さった。
「それでもいいよ。何を使っても何をしても構わないよ。…だけど私、あなたがいると駄目みたい。結果を後悔をするかもしれないけど…こうするしかないから」
Aはその刀の柄を支えにしっかりと真っ直ぐ女の目の前で立つ。
「…主、どうする気だァ」
岩融の言葉にしばらく怪訝そうにしていた女もふと正面を見返した。
「…いいわ。受けて立つわよ、娘。…岩融、あんたなら他の奴らを一掃できる?」
「ああ、勿論だとも。主のためならば」
岩融はにぃっと口を歪ませて今度は刀剣たちのほうへ向き直った。
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます!!すごく面白かったです。完結お疲れ様でした!第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした!とても面白かったです!小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした! (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか?面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです!宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:稜 | 作成日時:2015年4月10日 14時