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第十八訓 ページ18

深夜、夕餉も風呂も、書類の整理も終わり、刀剣たちが寝静まった頃。

−−−かた、ん

小さな物音でAは目を覚ます。

「………誰か厠にでも行ったのかな…」

−−−かたん

「……ん?」

明らかにこちらに近づいてきているその音を不審に思い、Aは上半身を起こした。

「主」

「…三日月?」

Aは声の主にホッと安堵し、同時に襖を開ける。

「入れてくれぬか?ちょっと聞きたいことがあってな」

「聞きたいこと?いいけど…」

三日月はそっと後手に襖をしめた。
まだ、彼の脅威に気づいてはいない彼女は。

「何、どうし」

布団から出、立ち上がったと同時に、三日月の目に。
狂気があると。

やっと、そこで。

「みか、」

「出雲守A」

ぽつり、そう三日月が呟く。

−−−キィンッ

瞬間、Aの身体は鎖にでも巻かれたかのように硬直した。
そのまま三日月の胸元へと倒れ込む。

「かっ…は……っ」

「命名とは、よく言ったものだな」

「……みか…づっ」

「ああ、苦しいのか」

大きく息を吐き出し、Aは肩で息をした。
三日月に抱きしめられたまま、それに反抗することもできずにただ荒い息を繰り返す。

「…どう、して」

「どうして、名を知っているのか、かな」

こくん、とAは頷いた。
三日月は面白そうに目を細める。

「教えてもらった。岩融にな」

「いわ、とおし」

「昼間、主の話を聞いて…Aの名を知っている者を操れる者がいるのなら、そいつに聞けば早いだろうと」

「数十年も…音沙汰がない人に、どうやって」

しどろもどろになりながらもAは淡々と三日月に問いかけた。
三日月も嫌そうな顔一つせず、ゆっくり、ゆっくりと言葉を返していく。

「神を侮るなかれ」

ふふ、と面白そうに三日月は笑った。

「Aの大切にしていたこの賽子…前の主のことも、Aの事も知っているこの記憶の塊を媒介として岩融と繋がった」

賽子は、いつもと変わらずにただ三日月の手のひらで転がる。

−−−くるり、

ただ、一つ違うのは、その賽子…三日月が揺らしているわけではないという事。
一人でに、ただ、ゆらりと。ゆるりと。

「岩融もこんな気持ちだったんだろうな」

「っっ、!?」

ぎゅっと抱きすくめられ、Aは身体を震わせる。

「…初めてだった、こんなにも何かを愛おしいと思えたのは」


泣きそうな声で

けれど口元の笑みは崩れないまま

三日月は、空に浮かぶ月夜の光を浴び

ただただ、満足そうに。

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設定タグ:刀剣乱舞 , 白崎稜 , 三日月宗近   
作品ジャンル:泣ける話
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます!!すごく面白かったです。完結お疲れ様でした!第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした!とても面白かったです!小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした! (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか?面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです!宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2015年4月10日 14時

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