花解け【d!】 (ページ4)

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　なんて、こともあったわけですが。

ぷし、と音を立てて缶ビールを開ける。女子力のかけらもない最強の夕飯・あたりめを武器に、私は通知の止まらない彼女からのLIMEを渋々開いた。案の定、動画のサムネイルばかり。

「見てやるか……」

　適当に開いて、安いお酒の味を楽しみながら眺める。殺して、殺されて。隠れて、騙して、自滅して。生き生きと動く彼らは、確かに楽しそうだ。彼女が好きになるのもわかるし、推してくるのもわかる。トントンさんマジオカンだし。でも、でもだよ。

「エミさんガバガバじゃないですかねえ……」

　どう考えても、彼。

　貸出処理お願いできますか。そうなんです、この本おもろくて。いくつになっても知識欲は収まらんねんなあ。笑いながら同僚と話していた彼の声に激似な男がいる。激似なんてものじゃない。本人だ。思わず彼らの口調が移るほど、彼本人だった。

　もうちょっと隠す気ないのか。ただでさえエミさんって名前と関西弁で生徒にもバレてそうなもんなのに。何で気づかれない？え、彼女、政治学取ってなかったっけ。

「明日から勤務気まずいなあ……」

　どうやら常連らしい彼のほんのり赤いはにかみを思い出して、私はビールを呷った。

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