花解け【d!】 (ページ19)

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「生徒さん、ですか？」

「いんや、人待ちやねん。ほんますまん、怖がらせてしもた」

「いいえ、気にしてないので……」

　どうやら話は終わったらしい。意を決して最後に顔を見たが、長い前髪のせいで目は合わなかった。少しだけ、安心した。

　横断歩道で赤信号にあたった。しがない非常勤司書の私は、車を持つほど裕福ではない。ので、交通費が出るうちは公共交通機関で通っている。まあ裕福云々の前に免許がないだけなんですけども。

「エミさん！おっそいわ！」

　不意に聞こえた彼の名前に振り向く。さっきのお兄さんがバシバシとエミさんの背中を叩いているのが見える。エミさんも結構フランクに接していて、へえ……お友達の前だとあんな感じなんだ。

「ゾムさん、急に呼び出すんやめてくださいよ……」

　ん。ん！？あれゾムさん！？私さっき喋ってたのゾムさん！？あまりの驚きに、歩が大きくなり歩くスピードも上がる。

　彼らから十分な距離を取った頃には、私の息は切れていた。ハア、びっくりしたなあ。そうか、仲良いのかお二人……。競歩並みの速さで駅までついてしまった私の心臓は、酸素を求めて激しく波打っている。

　……でも、背徳感にドキドキはしなかったな？

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