花解け【d!】 (ページ15)

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　嘘を、吐いてしまった。だって言えないじゃないか、当人を知っているのにエミさんが推しとか、恥ずかしくて言えないじゃないか！でも頑張ってガバってるとこ見ると可愛くて悶える。しぬ。

　いやでも、アイドルとか元カレとかずーっと“少年みたいな笑顔が素敵でしっかり者な兄貴タイプ”が好きだったし、強ち間違いでは……ない……ような……。ハア、それにしたってこんなことで嘘をつくなんてダサい。

　自己嫌悪に苛まれながら、食堂から図書館への道を辿る。そこへ、例の喧しい足音が近づいてきた。

「三島さん！昨日上がった動画見ましたか！？」

「え、見てない、けど」

「トントンさんが！かっこよかった！」

　そうして始まる、トントンさんが如何にかっこよかったかのプレゼン。そのプレゼン能力をテストや講義に生かせばいいのにと思う反面、私だって好きなものに対するエネルギーを仕事に変えて発揮できなさそうなので黙りこむ。何も言う権利はない。

「三島さんの推しのコネシマさんも頑張ってましたよ。あーでも、今回のMVPはエミさん！」

　ピクリ、肩が揺れる。昨日の動画時間がなくて見ていないのだ。今日帰りにビールを買っていこう。鑑賞会の日時が決定した瞬間である。そんな折だった、彼女の肩越しに今一番合いたくない彼と目が合ったのは。エミさんはパアッと喜色満面でこちらに向かってくる。

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