柱の少女は、狙われ体質。弐

漆拾捌【脱出】 ページ31

『痛っ、いたたたたた……お腹が痛い〜』


もちろんこれは嘘である。

鬼を欺き、鬼殺隊へ帰るための。








鬼「なんだ？腹でも壊したんかお前。」


今日の牢番の鬼は上弦ではない。下弦が解体された今、恐らくこの鬼を階級で表すことができないのだろう。

だけど、名前も知らないこの鬼は、ある程度の強さは持っているはず。








だから、こうして隙でも作らない限りこの牢からの脱出は不可能。


鬼は牢の鍵を開けて閉めないまま、私へ駆け寄る。きっと優しい人だったんだろうな。




『ごめんね』



私は近づいてきた鬼の鳩尾に肘打ちをかます。

不意の攻撃に驚いているところ、さらに蹴りを食らわして牢から出る。




嫌がらせかのように牢の格子の数メートル先に置かれていた私の刀を手に取る。

鬼「お前っ！騙しやがったな……！？お前に逃げられたら俺ぁ殺されちまうんだよ！」

鬼は必死の形相で私を追いかける。







『だから、ごめんて言ったじゃん。』

私は振り返り、数ヶ月ぶりに技を出す。



『宙の呼吸 壱の型 宙流天運』



鬼の首を一撃でとばせた。

若干体はなまってるけど、技の精度はそこまで落ちていない。


安心したのも束の間、直ぐに別の鬼が湧いて攻撃してくる。ここからが本番だなぁ。








出てくる鬼をザクザクと斬りながら進む。目指すのは地上。


私が脱走したという報せが城内に広まったらしく、鳴女という琵琶鬼がポンポン部屋を移動させるから平衡感覚が失われてきた。

鬼もどんどん増えてくる。もう何十体の鬼を斬っただろうか。

私を死に物狂いで捕えようと飛びかかってくる鬼を捌き、倒して体力はかなり消耗した。

少しでも集中を切らそうものなら、攻撃が体を霞む。

上弦、ましてや鬼舞辻無惨が来たらゲームオーバー。いそがないと。

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