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「ゔっ⋯⋯ゔぇ゛っ⋯⋯ぉ゛え⋯⋯」
Aは自室のトイレに駆け込み、込み上げる胃の中身を吐き出した。
何度も何度も内容物を吐き出し、それと同時に目の端を伝う涙。
漸く嘔吐感が治まった頃、Aは今はもう使っていない古い携帯を取り出した。
今はすっかり見なくなった開閉式のそれは、使わなくなった今でもAがずっと持ち歩いているものだ。
開いた携帯の待受画面には、桜をバックに満面の笑みの四人が写っている。
身体中花びらまみれで、お世辞にもキレイとは言えない四人を見て、Aはそっとその画面に触れた。
愛しい彼の輪郭をなぞる。
ぽたぽたと画面に雫が垂れた。
Aは顔を歪め、携帯をそっと閉じると、膝を抱えて顔を伏せ、しゃくりあげた。
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作者名:もんて、 | 作成日時:2021年5月18日 15時