続き ページ43
灰原が退散した後、その女性、特級呪術師の九十九由基さんと話をした。
彼女の言う呪霊のいない世界。
それだけ聞くと唯の夢物語だが、彼女の説はとても明確で現実的だった。
しかし、それでいてかなり遠回りな方法だ。
九十九さんの話に耳を傾けているうち、身体の内側に真っ黒いもやがかかり始める。
それはじわじわと全身にも同様に広がり、つい口をついて出たのは、
「それなら非術師を皆殺しにすればいいじゃないですか」
という言葉だった。
私は、自分の声にはっとした。
何を、何を言ってるんだ私は。
私はなんてことを考えて。
「夏油くん」
九十九さんの声にびくりと身体が強ばる。
「それはアリだ」
へ、と九十九さんの方へ顔を向ける。
彼女の顔はとても真剣だった。
とても冗談で言ったとは思えない。
その後九十九さんが帰ってからも、私はずっと同じことを考えていた。
九十九さんの言った言葉、私がどちらを選択するのかということ。
何と何をもってどちらと言うのか、深く考えてはいけない気がしていた。
今はまだ、私には答えが出せない。
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作者名:もんて、 | 作成日時:2021年5月18日 15時