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「すまない、A。言いすぎた。そういうつもりじゃ」
そろりと伸ばされた手を払い除ける。
「特級サマは二級程度に構ってる暇ないんじゃない?早く行きなよ」
外で補助監督が傑を呼ぶ声が聞こえる。
「A、待ってくれ。誤解を解きたい」
「非術師を助ける方が大事だろ。顔見たくないから行って」
そう言った途端、傑の傷ついた顔を見て即座に後悔したが、何せプライドが高いもので、顔を背けて拒絶した。
傑が机に雑誌を静かに置く音が聞こえ、続けてゆっくりと扉が閉まる音がした。
「はぁぁぁ」
盛大な溜息をついて、心の中で傑にごめん、と謝る。
私と傑は、世のカップルよりも喧嘩が多い方だが、今回は私が全面的に悪い。
傑は心配してくれただけ、分かってる。
でも私の同級生は六眼と無下限の抱き合わせ、他者への反転術式、珍しい呪霊操術、と強者揃い。
そりゃ一緒にいて劣等感は感じるわけで。
早く追いつきたくて、あわよくば追い越してみたくて、等級に見合わない任務を無理言って入れてもらったりした。
「その結果がこれだわ馬鹿」
自分に悪態をつく。
自分が弱いのはよく分かってる。
でも、傑に言われると恥ずかしく、虚しくなった。
「弱いとか、初めて言われたな」
悟はよく言ってくるが、傑には言われたことがなかったから、心のどこかで認めてくれてるんだと思ってた。
「うぁぁぁ」
奇妙な呻き声をあげ、考えることを放棄した。
「やめやめ、悶々と考えんの柄じゃないし」
一人でいたらまた考えてしまうから、共有スペースに向かうことにした。
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作者名:もんて、 | 作成日時:2021年5月18日 15時