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「はい差し入れ」
自主練の休憩中に、傑が来て缶を手渡してくれた。
「ありがと⋯⋯ってこれミルクティじゃん!」
「私の好きな物は君にもお裾分けしたくてね」
私がミルクティを嫌いだと知ってから、ことある事にミルクティを渡してくる。
「要は嫌がらせでしょーが」
「そうとも言うね」
「それ以外ねーよ」
私はぐいっと缶を傑に押し付けた。
「でも、君にも好きになって欲しいって言うのは本当だよ」
ふわりと微笑んだ傑に負け、おずおずと手を差し出した。
「⋯⋯やっぱ頂戴」
そろりと口をつけ、缶を傾ける。
「どうだい?」
途端に口の中に苦味が広がった。
「げぇぇ苦ぁ。やっぱ無理だわ」
「残念だな」
本当に残念そうな顔をする傑。
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'
「結局最後まで好きになれなかったな⋯⋯苦っ」
高専での戦いで色々なところが崩れていたが、自販機だけは無傷だった。
私は飲み干したミルクティの空き缶をゴミ箱に捨てた。
「イイ女はここで、好きだったよ、なんてお綺麗な涙流して終わるんだろうな。でも私にはそんなの無理だから。死んでも好きだよばーか」
私は空を見上げてにっと笑う。
「来世か、来来世か。それまでには罪償っててよ」
廻って廻ってまた出会えたら、今度こそ君に祝福を。
(end)
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作者名:もんて、 | 作成日時:2021年5月18日 15時