【呪術廻戦】今度こそ君に祝福を＿２ (ページ17)

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Aへ

何から書こうかな。
君に手紙を書くのは初めてだから、もっとマシな内容にしたかったんだけどね。

そうだな。
これは私の独り言なんだけれどね。
君の強くて真っ直ぐで、人の為に涙を流せる優しいところや、限度を知らない危ない悪戯をする子供っぽいところや、怒ったら手が付けられないくらい恐いところが、私には新鮮で美しく思えたんだ。
私と違って表情が豊かで、一緒にいて飽きなかった。
君の表情の全てを知りたかった。

でも、すまない。
君は、人間の汚さや醜さ、愚かさを知っていて、人間の本質を悟った上で、人を助ける。
私にはそれが到底出来なかった。
初めは、小さな変化だった。
非術師は守る。非術師は弱い。
私は強いから、守らなければ。
でも、非術師は本当に価値のある人間だろうか。
助けたところで、別の誰かを犠牲にするような人間なら、いない方がいいのではないか。
自分の指針が、信念が、揺らぎ始めて傾いて、どちらが正しいのだろう。
どちらも正しいのだろうか。
いや、どちらも間違っているのでは。
非術師が生み出した呪霊から、我々呪術師が命をかけて非術師を守る。
私たちは何のためにここにいるのだろう。
非術師から生まれたものから非術師を守るだけの、そんな人間になりたかった訳じゃない。
守る価値のある人間を、守りたい。
それが、呪術師だ。
守るばかりで誰も守ってくれない。
変じゃないか？
私も、君と同じ。
悟ってしまったんだ。
呪術師の行く末に、未来に、希望がないことを。
ただ、君とは違った悟り方をしてしまった。
私が選んだ道は、君とは違うんだ。
本当は相談したかったんだけどね。
私の幼稚な我儘を、君に伝えるのがはばかられたんだ。
君は人間のクズさを知った上で、手を差し伸べられる優しい人間だから。

だから、本当にすまない。
私は、同じ道は歩いていけない。
どうか私のことは忘れてくれ。
忘れて、君は幸せになって。
私とは違う道を悟と、硝子と、それから、いつか愛する人と歩んでくれ。
Aの幸せを、心から望むよ。

沖縄に行く約束、守れなくてすまない。

夏油傑