検索窓
今日:1 hit、昨日:25 hit、合計:43,422 hit

10 ページ10

「目を通せ」



任務終わりに硝子の所に寄ったAは、手渡された書類を受け取った。



「なあに、これ?」



書類には、真っ二つのバケモノ数体の写真と、文字の羅列が記されていた。



「二日前の任務で、Aが祓った呪霊の他に数体低級呪霊がいただろ」


「そうらしいね、覚えてないけど」



Aは先程車でぐしゃぐしゃにした報告書を広げて言った。



「自分で書いた報告書の内容くらい覚えときなよ」



硝子は呆れたように溜息をつき、そして重苦しく口を開いた。








「人間だった」





硝子の真剣な様子とは対照的に、Aは書類から目も上げずに答えた。



「そうね、写真に写ってるもの」



そして、今度は書類を閉じ、大きく伸びをしながら続ける。



「でもまぁ、もう助からなかったでしょうし仕方なかったわよ」



彼女は報告書を再度丸め、近くのゴミ箱に捨てた。



「……そうだな」



硝子は白衣の内ポケットから煙草を取り出し、火を付け口の近くまで持って行ったが、結局吸うことはなく、ぐしぐしと近くの壁に押し付け火を消した。



「ほんとに禁煙続けてるのね」



Aは大して興味もなさげに、だが他に話題もなく、といった様子でそう話しかけた。



「それは覚えてるんだな」



硝子はふっと息を漏らし、火を消した煙草から出る煙が揺れた。



「忘れないわ、家入硝子のことは」



Aは珍しくにっと笑い、おどけた仕草をした。


その表情に、硝子は懐かしい、誰かの影を見た。



「明日も任務だろ、もう戻れ」



硝子がそう言って話を切り上げると、Aはもう元の無表情に戻っていた。



「それじゃ」



Aはそれだけ言うと解剖室を出た。








外に出ると、地下には決して届かなかった陽の光が眩しく、Aは目を細めた。



「まだ明るい」



そう呟くと、彼女は高専の学び舎に目を向けた。


古びた木造建築は、十年前も、今も、変わらずそこにあった。


Aはほんの少し顔を歪め、今度は陽の光の当たらない影を歩き、高専を後にした。

11→←9



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
74人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もんて、 | 作成日時:2021年4月10日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。