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「桃鉄しよーぜ」
高専一年目の大晦日、私の部屋のドアを蹴破りズカズカと無遠慮に入ってくる悟。
「共有スペース集合な」
一方的にそれだけ伝えるとすぐ出て行った。
夜蛾センの所に寄ってから共有スペースに行くと三人は既にそこにいて、鍋のぐつぐつと煮える音と、テレビからは桃鉄の軽快なゲーム音、口喧嘩する最強二人の声。
いつも通りの落ち着く小さな四人の世界に笑みがこぼれた。
「ごめん遅れたわ〜」
夜蛾センからくすねた焼酎のビンを、戦利品、なんて言って台所に立つ硝子に渡す。
「ナイス」
硝子とハイタッチしてコタツに入った。
「うぁぁ寒い」
なんでここにしかコタツが無いんだ、なんて悪態をつきながら桃鉄の画面に自分の名前が登録されるのを見ていた。
「おいこら」
悟が私の名前を”チビ”で登録しやがった。
コタツの下から悟の足を蹴飛ばすと、いてっ、なんて思ってもないだろうことを言っていた。
いつもなら蹴飛ばしたらすぐキレるのに、今日は機嫌良さそうににこにこしている。
大晦日を私たちと過ごせるのがそんなに嬉しいのか。
「アホ面〜」
鍋の中身をつっつきながら言ってやっても悟に気にしている様子はない。
「これも食べなよ」
なんて、傑は私の嫌いな具材ばかり取り皿に入れてくる。
「うざ」
仕返しに悟が咥えてた棒付き飴を傑の取り皿に突っ込んだら、割とガチで怒られた。
「A」
「すみませんでした」
コタツから出て傑に土下座をかます私を蹴りでどかせ、硝子もコタツに入ってきた。
「かんぱーい!」
齢16歳(傑は15歳)にして焼酎で乾杯し、桃鉄をスタートする。
「100年やろうなんて誰が言ったんだよ馬鹿かよ」
もう新年を迎えているというのにまだ半分の50年にも到達してない桃鉄の画面を見ながら悪態をつく。
シラフの悟はいいが残り三人は酔いが回っているのもあって余計しんどい。
「中断して初詣行こーよ」
ついでに酒のつまみ買おう、と提案すると三人は食い気味に賛成、なんて返し、悟の財布だけを持って高専の外に出た。
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作者名:もんて、 | 作成日時:2021年4月10日 16時