ep5 ページ5
side.takaki
強引に伊野尾くんの後ろの席をゲットした。(無理矢理)変わってくれたメガネくんのためにも、伊野尾くんへのアプローチを頑張らなきゃな。
とは思ったものの。
「伊野尾くん！教科書忘れたから見して。」
「隣の人に見せて貰えば。」
「伊野尾くーん♡ご飯一緒に食べよ♡」
「無理。きもい。」
ずっとこんな調子。
そのほっそい腹に一発殴り入れてやろうか、と思うことが何度もあった。でも抑えてる俺、かなり偉いと思う。
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伊野尾くんのことはまだ何も知らないし聞いても教えてもくれないんだけど、ひとつ、分かったことがある。
顔がめちゃくちゃ綺麗ってこと。
今まで色んな女見てきたけどそんな奴らとは比にならないほど綺麗。正面で顔見るとプイッと顔を逸らされちゃうから今まではあんまり見ることができなかったんだけど。
伊野尾くんが頬杖をついて窓の外を見てる時、後ろから綺麗な横顔を見ることが出来る。見惚れるほど綺麗。
もっと近くで見てみたいけど、そんなこと言ったらまた気持ち悪がられるんだろうな。
「ね、伊野尾くんよく窓の外見てるよね。なんで？」
授業中、小声で話しかけてみる。
「………別に。先生の声聞こえないから暇なだけ。」
窓の外を見る目線は外さずそう答えてくる。そっか。伊野尾くんは先生の声が聞きたいんだ。授業を真面目に受けたいんだな。
確かにこんなうるさい教室じゃ授業はまともに受けられない。先生もガラの悪い生徒達に怯えて声小せーし。
「うるせーぞ、お前ら！静かにしろよ！」
大声を出せば一瞬で静かになる教室。先生まで黙ってしまい、目を見開いてこっちを見てる。そりゃそうだよな、いつも一番うるさいの俺だもん。
でもそんなことは関係ない。
「伊野尾くん、これで授業受けられるね。」
そう話しかけてみる。
伊野尾くんはくるっと振り返って俺の顔を見る。この席に変わって初めて目が合った。
綺麗な瞳だななんて考えていると、
「お前、本当嫌い。」
それだけ言い残した伊野尾くんはカバンを持って教室を出て行ってしまった。
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作者名：みはる | 作成日時：2016年9月1日 23時
