ep28 ページ28
side.inoo
次の日、学校へ来てみると高木はいなかった。久しぶりに1人で教室に入る。
「おはよっす！」
「伊野尾、おはよ〜。」
驚いた。俺1人でもみんな声をかけてくれるんだな。高木と一緒だから気を遣ってるのかと思ってた。
「伊野尾ちゃん、おはよ〜。」
「おはよ、山田。」
「今日の体育持久走らしいよ。俺嫌だな〜。」
山田は今日も普通に話しかけて来てくれる。でも話は全く頭に入ってこない。考えてしまうのはぽかんと穴の開いた後ろの席の人のこと。
遅刻なんて珍しい。
ガラッ
3時間目の数学の途中、やっと高木がきた。
高木は、金髪に戻っていた。
教室の奴らも、先生もみんな驚いて声が出せないでいる。
ヅカヅカと俺の後ろの席まで歩き、バーンと鞄を机に投げつけたか思えば椅子に座り、両足を机の上に乗せる。
「何？」
いつもより明らかに低い声でそう声を発すれば高木を見てた奴らは全員目をそらす。
なんで高木がこんな機嫌悪くなってるの。ただの逆ギレじゃんか。
なんとか先生が授業を再開するけど、高木が舌打ちしたり机をガンッと蹴飛ばすたびに授業が止まる。みんな高木に怯えていて授業になりゃしない。
.
休み時間になっても高木は一切話しかけてこなかった。こんなの初めてだ。
いつも授業中でも関係なくずーっと話しかけてきてたのに。
「雄也さーん。さすが雄也さんっす。金髪にあってますよ！」
「そう？やっぱ俺はこれだよな〜。」
後ろでそんな会話をしてるのが聞こえる。
俺は嫌いだよ。金髪なんて。高木に「伊野尾くーん、どう？」なんで聞かれたら絶対に嫌い。やめなよ。って答える。
でも、話しかけてこない。
本当に俺に飽きたの？高木のこと好きっていう俺はつまらない？
「伊野尾ちゃん、食堂行かない？」
「えっ？あ、うん。行く。」
山田に声をかけられて教室を出る。正直、教室にいるのが嫌だった。後ろに高木がいるのが。
ガンッ
教室を出るとき、また机をける音が聞こえる。どんだけ自己中なんだよ。他の人に迷惑たくさんかけて。
「山田、早く行こ。」
足が止まった山田の背中を押す。
「……うん。」
どういうつもりか知らないけど、俺はそんなの全然怖くないからな。
.
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作者名：みはる | 作成日時：2016年9月1日 23時
