嫌よ嫌よも好きのうち。( takaki×inoo ) (ページ26)

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ep26 ページ26

side.inoo

「俺担任に呼ばれてるんだったわ！」

ハッと思い出したように叫んだ高木は実験室から飛び出して行ってしまった。

騒がしいやつ。

そんなことを思いながら1人で実験室を出る。

「伊野尾ちゃん。」

「ん？」

扉に寄っ掛かりながら立って居た山田が実験室を出た瞬間に声をかけてきた。いつからそこに居たのか。なんでそこにいるのか。そんな疑問は次の言葉で全てぶっ飛んでしまった。

「今、雄也とキスしてた？」

「…………え。」

見られてた。

よく考えたら人気がないところとは言え、学校てキスしてるなんて正気じゃない。何やってるんだ、俺。

顔から汗が噴き出る。今すぐ逃げ出してしまいたい。顔を見られたくない。恥ずかしい。

「伊野尾ちゃんって雄也と付き合ってるの？」

表情一つ変えずにそう聞いてくる山田。

何も答えられなかった。

お試しで付き合ってるなんて言えなかった。

「雄也のこと、本気にならないほうがいいよ。傷つくのは伊野尾ちゃんだから。」

「どういう意味？」

「雄也前に言ってたんだ。伊野尾ちゃんは遊びだ～って。俺に惚れさせたいだけって。もし伊野尾ちゃんが雄也のこと好きになんかなったらさっさと捨てちゃうんだよ。」

胸がギューっと締め付けられる。

そんなこと分かってる。あいつが俺に本気なわけない。分かってたんだ、俺だって。

でも心のどこかでそうじゃない、俺のことだけは本気なんじゃないか、って思ってる自分もいた。でもそんな考えはいつも心の奥底に押し込んでた、つもりだった。

山田が近付いてきて体を揺すられる。

「伊野尾ちゃん目を覚ましなよ。あっちは遊んでるだけだよ。伊野尾ちゃん雄也のこと嫌いなんだよね？」

「…嫌いだよ。」

「じゃあもう近付き過ぎない方がいいよ。あの人は伊野尾ちゃんに悪影響だよ。」

「うん。」

「もう、行こ？次の授業始まっちゃう。」

山田が俺の手を引いて歩き出そうとする。

「伊野尾ちゃん？」

足が、動かない。

高木に、会いたくない。遊びだって分かってても高木の顔を見たら絶対また引き戻される。自分でも分かってるんだ。

「ごめん、具合悪いから保健室行くわ。」

「じゃあ俺も、」

「良い、俺1人で行くから。」

山田の手を振り払って保健室に向かう。なんか俺落ち込んでるみたいじゃん。馬鹿みたい。

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