ep25 ページ25
side.inoo
「近いわ！離れろ！」
「なんでよ〜良いじゃん〜。」
いつものように廊下で高木に捕まって抱きつかれながら教室に入る。
「雄也、おはよ！」
「おう！」
「伊野尾もおはよ！」
「……おはよ。」
最近、クラスのみんなは俺にも話しかけてくるようになった。最初は挨拶くらい返しても良いかな程度だったけど、今では普通に喋れてる。
少し前の俺、どんだけ捻くれてたんだろ。
「あれ？伊野尾くんおはようのチューは？」
「うるさい。そんなのいつもしてない。」
高木とお試しお付き合いをしてから１週間が経った。残り１週間。
高木は付き合ってるんだから良いじゃんと、キスばっか求めてくる。さすがプレイボーイって感じだ。
俺はそんなの求められても困るだけだし、すべて断っている。
訳ではなかった。
.
「伊野尾くーん。」
移動教室から教室に戻るとき、誰かに呼ばれて振り返れば勢いよくひっぱられる腕。
「うわっ。」
引っ張られたそこは実験室。授業がないときは使われず空き教室になってる。
肩を持ってくるっと振り返させられる。
「誰もいない場所見つけた。はい、チューして。」
やっぱり高木。両手を俺の肩に乗せてそのまま壁に押し付けてくる。いっつも俺からキスするようにお願いしてくる。こんなに近いのに、俺抵抗してないのに、勝手にしたら良いのに。なんで俺からばっかり求めるの。
そんなことを思っても結局俺はキスしてしまう。だってそうしないと離してくれないんだもん。
俺の肩に置かれてる腕をキュと握って、キスをする。
「ん、ありがと。
ねえ、俺のこと好きになった？」
「んーん、嫌い。」
これもお馴染みになってしまった。キスした後、毎回好きになったか聞いてくる。俺はそれに毎回嫌いって答える。
だって高木、嫌いだもん。こんな自分勝手なやつ。
それに高木ってもし俺が好きになっちゃったらもう俺に興味なくなっちゃうんじゃないか。最近話しかけてくれるようになった奴らも多分もう俺には話しかけてくれなくなる。
また、山田しか友達がいない普通通りの学校生活に戻るだけ。ただ元に戻るだけなのに、寂しく思ってしまうのは何故だろう。
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作者名：みはる | 作成日時：2016年9月1日 23時
