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ep24 ページ24

side.takaki






どさくさに紛れてキスをお願いしてみると、案の定即断られてしまった。




そんなの想定内だったけど。





「良いじゃん。お付き合いの記念に一回チューしとこ。」




「何がお付き合いだよ。調子乗るなよ、高木。」




冷たい言葉でピシャリと言い返される。





隣に座っているのに伊野尾くんは体ごと俺とは反対方向に向けてしまった。仕方なくその後ろ姿を見つめる。シャツから透けてる体のラインが男とは思えないほど細い。




なんとなく、伊野尾くんが寂しそうに見えて、後ろから抱きついた。





「ちょ、やめろよ。抱きつくなって。」




「やだね。離して欲しけりゃキスさせろ。」




「またそれかよ。」









伊野尾くん、ここにいるのに。こんな近くにいるのに、なんでこんな遠いんだろう。




どうやったら俺を好きになる?



後ろから抱きついたまま伊野尾くんの肩に顔を置く。




「伊野尾くん、まだ俺のこと嫌い?」






いつもより真剣な声で聞いてみる。俺、こんなに分かりやすく愛情表現してるのに、まだ好きにならないの?





伊野尾くんが顔だけこっちに向けてくる。お互いの息がかかるくらい、近い。





「………嫌い。」






そのまま顔を近づけてキスしてきた伊野尾くん。






俺バカだから、全然意味が分からない。






嫌いなくせにキスするのかよ。






そっと唇を離した伊野尾くん。







見つめ合い、時が流れる、








かと思いきや。









「ヨーーーーーーシ!キスしたから離れろ!」





伊野尾くんがバッと勢いよく立ち上がる。肩に顔を載せていた俺は舌を噛んでしまう。




「いって〜。いきなり立ち上がるなよ〜。」





「ふふ、ダッサー。キスしたら離れるって言ったのに離れないからじゃん。じゃ、俺もう帰るんで。」




カバンを掴んでそそくさと玄関に走っていく。追いかけようと思っても、舌のダメージを受けて立ち上がれない。




ガチャ、バタン。





扉が閉まる音が聞こえた。




ぶつけた顎をさすりながらソファに座りなおす。背もたれに思いっきり体を預けて天井を見上げる。





伊野尾くんって、本当に何考えてるのか分からない。





でも初めて伊野尾くんからキスしてくれて喜んじゃってる俺はポジティブすぎるのかな。




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作者名:みはる | 作成日時:2016年9月1日 23時

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