◇解説 ページ4
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10年前の大雨により、土砂に巻き込まれ、あるいは川に呑み込まれ、祈里村は壊滅状態となった。
逃げ遅れた多くの住民が犠牲となった。
現在、村があった場所には瓦礫が残されているだけである。
もちろん住民はおらず、村は現在、存在しない。
祈里村は災害の後、彩留市に吸収合併され、現在の地名は『彩留市祈里』となっているが、住民はいない。
当時、彼らは避難していたり、巻き込まれた後に救出されたりして、無事だったが、幼い彼らにとってはショッキングな出来事だった。
そのことを知っていて、今も覚えていたはずだったのだが、10年後呼び戻されるようにして、村を訪れた彼らは、村に入った瞬間、村が今も存在しているように錯覚してしまうのだった。
そこには土砂に呑み込まれたはずの村が、亡くなったはずの住民が、10年前と変わらぬ姿で存在していたのだから。
◇
この物語の主人公である彼らの中には、家族や友人を亡くした者も多いだろう。
身近な人を失い、故郷の村も消滅してしまった。
そんな子供たちは、運良く無事だった家族と彩留市の新しい学校に通うかもしれないし、遠い親戚のもとに引き取られるかもしれない。
そうして、バラバラとなった幼なじみ6人は、最初こそ連絡を取り合っていたが、それぞれが新しい世界へ慣れると、次第に疎遠になってしまうのだった。
彼らが皆集うのは災害から10年後のことだった。
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作者名:花乃子 | 作成日時:2023年4月14日 20時