記憶違い〈ksk〉 ページ25
目の前でニコニコと笑う彼女は、俺のことを忘れているようだった。
「……A、」
「なんでしょうか?」
出会ったばかりの頃の敬語。懐かしい、なんて思えるわけもなく目頭が熱くなるのを感じた。
白い部屋でベッドに上半身を起こした状態の彼女は、病的に細く、それでも何よりも綺麗だった。
「あの、こーすけって言います」
「こーすけ、さん」
勝手に自己紹介をすると、小さな口でぽつりと繰り返す。付き合いだしてからは呼び捨てになったのにこれじゃあ逆戻りだ。
「体調は?」
「手術してだいぶ良くなった気がします!……病気のこと、知ってるんですか?」
「あ、……まぁ。」
気持ち悪い、と思われてしまっただろうか。でも彼氏だから、なんて言っても信じて貰えないだろう。
「どこか痛かったり、とかは」
「あんまりないですね!」
「……そっか、」
手術、してないもんな。痛いはずがない。
病気が悪化して、手術の話が出たときに急に眠りだしたかと思えば全く起きなくて。
……キス、なんかもしてみたけどお伽噺のようにいくはずもなく。
1年経ってようやく起きたかと思えば記憶はないし、手術を受けたとか違う記憶が残ってるし。手術?そんなの受けられないくらい悪化してたよ、Aの病気は。
「暇でしょ、ここじゃ」
そう言って彼女と俺が好きなアーティストのCDを渡すと、彼女が驚く。
「これ、好きなんです!」
知ってる、知ってるよ。
「私たち、気が合うかもしれませんね!」
あぁ、前にも聞いたその言葉。
もう一度、告白したら受け入れてくれるの?なんて。そんな勇気、俺にはないのに。
「いっぱい聴きますね!」
そう言って笑う君は、自分の記憶が抜け落ちていることを知らないのだろう。
〈記憶違い〉こーすけ
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←義理兄妹〈hr〉
29人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふらわぁ(プロフ) - エティシアさん» ありがとうございます!読んでくださるだけですごく嬉しいです。元はといえば話を思い付かない私が悪いので・・・・・・更新は遅いですが、楽しみにして頂けると嬉しいです!!エティシアさんのコメントで頑張れます! (2020年3月16日 11時) (レス) id: bd0b8806a1 (このIDを非表示/違反報告)
エティシア(プロフ) - 1話で終われるようなリクエストが思いつかなかったので書けませんでしたが、いつも小説楽しみにしています。何もお手伝い出来ませんがこれからも頑張ってください! (2020年3月15日 1時) (レス) id: 910526fed8 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - コメ返ありがとうございます!!楽しみにしています! (2019年11月7日 20時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
Tiger Flower(プロフ) - ねむりねこさん» コメントありがとうございます!嬉しい、めっちゃ嬉しいです!!一応言っておきますが、ふらわぁとTigerFlowerは同一人物です笑これからも見ていただけたら嬉しいです! (2019年11月7日 20時) (レス) id: e40e961212 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - 初めてまして!どれもこれも素敵過ぎますっ!応援してます!更新頑張って下さいね!!!! (2019年11月7日 20時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふらわぁ x他1人 | 作成日時:2019年9月20日 22時