155. ページ23
Side:fk
ようやく部屋に通されると、
阿部ちゃんは疲弊しきった顔でベッドに横になり、
酸素マスクをつけられて、苦しそうに呼吸をしていた。
ab「ごめん、驚いた、よね」
「いいよ、しゃべらなくて」
これはすぐに取れるから、と言って
酸素マスクを指差す腕が細い。
点滴の針と管すら、その腕には重そうに見える。
ab「みんなで、来てくれたの？」
阿部ちゃんはマスク越しでも伝わるくらい、
本当に嬉しそうに言って、俺たちの顔を見た。
kj「そやで！今日は稽古オフなんよ！」
ab「そっか」
阿部ちゃんに見せようと持ってきた稽古映像も、
話そうと思っていた演出のことをも、
衣装や新しい舞台装置のことも、
準備していた内容は全部頭から抜けてしまって、
会話が続かない。
全員が動揺しているのを
阿部ちゃんはきっと敏感に感じ取っている。
話す内容を探すように、
視線が忙しなく揺れていた。
俺が話さないと、と思うのに、
焦れば焦るほど、言葉が出てこない。
病室には、
阿部ちゃんの衣装がまだかかっていて、
彼は視線をそこに移動させると、
思い出したようにこちらを見た。
ab「俺のパート、
翔太が歌ってくれるんでしょ？」
押し黙っていた翔太が顔をあげる。
nb「…あぁ、そうだよ」
ab「楽しみだなぁ、翔太が歌ってくれるの」
翔太はしばらく黙っていたが、
急に目に力がこもって、
阿部ちゃんの方に歩み寄ると、
突然ガンを飛ばし始めた。
nb「…ったく、まじで大変なんだぞ。」
予想外の態度と発言に、
一瞬空気が凍る。
nb「移動まじで大変なの。
俺その前一番上手にいるのにさ、
照が真ん中まで走れって。
まじでスパルタ。鬼。
全力で走ってから歌えとか、酷くない？
その前太鼓だからな？」
重苦しかった空気が、一瞬で軽くなったのを肌で感じた。
この空気をぶった切る、
当たり前の、愚痴、言葉、態度。
翔太の精一杯の、不器用な優しさだった。
iw「はぁ？仕方ねえだろ」
ru「でもそんなこと言ったらさ、
阿部ちゃん移動多くなかった？
一番上手から一番下手とかさ」
sk「そうそう、
阿部ちゃんいつも走ってたよね。
とことこって！！
翔太がいままで楽しすぎなの！」
kj「しょっぴーずっと文句言っとるやん」
nb「はぁ？？」
阿部ちゃんはそんな会話を聞くと、
心から嬉しそうに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 922人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なぎしゅう(プロフ) - 1番は9人全員の気持ちの表現の仕方が9人それぞれ雰囲気が出てて言葉使いが大好きです 。(プロの方なんじゃないかと思う)それこそ、私の中ではこのSnowManがリアルみたいで。これからも頑張ってください。 (2021年3月26日 6時) (
レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - REBORNに続いて2作品目も号泣でした。ハッピーエンドじゃないけどでも悲しいだけじゃないそんな終わり方に余韻に浸ってます。お話なはずなのに違和感がなくて、リアルじゃないと分かっていても私の中の9人とマッチしていて、まるでSnowManを見ている様ですごく幸せです (2021年3月26日 0時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
Hihi - すいません。タイピングに誤りがあったことをここでお詫びします。haryuさんの作品がとても大好きです！ (2020年12月15日 22時) (レス) id: c502dcfb37 (このIDを非表示/違反報告)
Hihi - とても素敵な作品で思わず一気に読み進めてしまいました。悲しくて儚いのに、そして思わず涙が溢れそうなのに、希望があり思わず微笑んでしまう、そんなharturaさんの作品にとても感動しました。完結おめでとうございます。そしてお疲れ様でした！ (2020年12月15日 22時) (レス) id: c502dcfb37 (このIDを非表示/違反報告)
繋都(プロフ) - いや、咲き続けますよう。ですね。 (2020年11月1日 19時) (レス) id: 4143e4b1c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：haryu
| 作成日時：2020年10月19日 20時
