花笑み Ⅲ (ページ33)

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「熱は？風邪？病気の影響？」

まだ誤魔化そうとする阿部ちゃんに
畳み掛けるように言うと、
阿部ちゃんはようやく諦めたように、ふふっと笑って両手を下ろした。

その普段よりも少し温かい手を包む。

「…頼むから、
　無理しないで。約束して。」

ab「大げさなんだよなぁ」

そうもなるよ。
何でも隠そうとするんだから。

ab「ごめんね、心配掛けて。
　でも大丈夫。」

「病院行く？
　タクシー捕まえてこようか」

ab「平気。
　最近ちょっと動くと、
　すぐ微熱が出るから、
　解熱剤ももらってるし、すぐ落ち着くから。

　先生もこれくらいなら問題ないって。」

自嘲気味にそう笑うと、
まだ鏡に向かっているメンバーを少し気にしながら声を潜め、
「…過眠のことは？」
と遠慮がちに聞いてきた。

ru「…ごめん、僕。
　病気のせいだろうなって。
　調べてる時に読んだ症状に似てたから…

　みんなにも話しちゃった。
　合ってる？」

ラウが申し訳無さそうに、
自分が立てた仮説を阿部ちゃんに話すと、

彼は「先生に聞いたみたいに正確」と言って笑った。

運動をすると熱が出ることも初めて知ったし、
多分相当身体はしんどいのだと思う。

ab「変な気遣わせちゃったね」

そう言って少し肩を落とす姿が小さく見える。

ab「でも大丈夫。
　やりたいの。頑張りたい。」

その視線の、意思の強さにまた負けてしまう。

「…わかったから。
　しんどいときはしんどいって言うんだよ。
　
　心配で荷物まとめちゃったよ、
　病院連れて行かなくちゃって」

ab「ごめんごめん」

「…解熱剤は？どれ？
　あーもう、飲んでる薬全部教えろ、」

その笑顔の裏にどんな気持ちを隠しているのだろうか。

きっと俺の想像を絶するような、
色々なことを考えているんだろう。

もちろん、その荷物を一緒に持ってやりたいとは思った。

だけど、それを追求する度胸はない。
それを全て聞いたとして、
難しい話や、彼の病状の全てを知って
平常心でいられる自信は持ち合わせていない。

だったら、全部気づかないふりをする。

詮索して、崩れてしまうくらいだったら、
彼が思うように、彼がしたいようにさせてあればいい。

…なんて、本当は俺が怖いだけだなんて、
そんなことはとっくに気がついているけれど。

　