花笑み Ⅲ (ページ4)

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医者になりたいと思ったのは嘘ではない。

阿部ちゃんは笑っていたけれど。

…まぁ、正直、
そんなに甘くないとは思っているけれど、

せめて、この病気に関する知識は
自分に持てる限りは持とうと思っていて、

だから、難しい論文や、
英語の論文、ネットの情報をかき集め、

この病気の研究をしているような大学に入れれば
きっといろんな可能性や治療法、
ネットには載っていない情報も
得られるようになるんじゃないかと思って、

必死に勉強をしてきたつもりだった。

だけど、あの日阿部ちゃんは、
治療を辞める、と言った。

何度も読んだ論文、ネットの情報、
持ち得る知識を全部かき集めても、

僕が高校を卒業するまでに、
きっと阿部ちゃんは…

初めて、自分の若さが損だと思った。

追いつかない年齢ほど、もどかしいものはない。

自分がどんなに必死に努力したところで、
年齢も時間も追いつかない。

自分の時間は余っているのに、
阿部ちゃんの時間は足りないのだ。

それでもやっぱり諦めきれなくて、
僕は勉強することを辞められなかった。

まだ間に合うんじゃないかと、
やっぱり嘘なんじゃないかと。

阿部ちゃんのいないSnow Manなんて、
想像出来ないから。