花笑み Ⅲ (ページ28)

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113.真ん中ページ28

Side:iw

「5,6,7,8…で、阿部が0番」

新曲の振り写し、
俺が当たり前のようにそう言うと、

阿部は大きく目を見開いて「え？」と
素っ頓狂な声をあげた。

「だから、阿部が0番」

翔太がにやにやしているのが目に入る。

俺は至って真面目な顔をして、
立ち位置を指差しながら阿部に指示を飛ばしている。

阿部は動揺しながらゆっくり近づいてきて、
俺は待ちきれなくて、その細い腕を掴むと、
半ば押し込む形で真ん中に立たせた。

ab「本当に言ってる？」

「もちろん。それで…」

他のメンバーがそれを囲うようにフォーメーションを組むと、
阿部は余計に居心地が悪そうにきょろきょろと視線を忙しなく動かした。

佐久間がそれを見て指を指して笑っている。

引っ張られるように、他のメンバーも
阿部が挙動不審になっているのを見て笑い始めた。

ab「えぇ…本当に？」

その場にへなへなとしゃがみこんで顔を覆う。

fk「はいはい、文句言わない！」

dt「ちょっと阿部、ちゃんと立ってて」

みんなにニヤニヤされながらいじられて、
阿部はまた不安げに真ん中に立つ。

一番目立つパートだった。

今回はここに向けてストーリーを作り上げたと行っても過言ではない。
俺が初めて聞いた時に見えた光景は、これだった。

阿部を中心に、俺たちが花弁のようにその周りの回る。
その真中で阿部が歌って、踊る。

彼ははまだ困惑しているようだった。