花笑み Ⅱ (ページ48)

今日:9 hit、昨日:49 hit、合計:292,804 hit

86. ページ48

・

瞳にしずくをいっぱいにためたまま、
照はしっかりと俺を見つめて、
真っ直ぐに言葉を紡いでいく。

iw「あいつは、俺を信じてくれた。
　だから俺も信じたい。

　 …信じたいのに…
　もうひとりじゃ苦しいんだよ…

　 …だから佐久間、
　俺と一緒に信じてくれないか」

それがどんなに辛いことか、
俺は分かっていた。

照の瞳から、
とうとう涙が一筋こぼれて、

堰を切ったように絶え間なく流れ始める。

iw「阿部は俺を信じてくれてるのに、
　俺は阿部を…」

俺の顔を掴んでいた手を離して、
照はこぼれ続ける涙を乱暴に拭う。

「信じる。
　俺も…信じるよ」

弱気な言葉を遮るように、そう言った。

照に手を離されても、
顔は自然と前を向いていた。

照が俺にくれた、
優しくて力強い言葉に対して、
申し訳ないくらい短い言葉だった。

それでも、今はそれしか言えない。

きっと照なら、わかってくれる。

照は、「こんなはずじゃなかったんだけどな」
なんて強がって、何度も何度も、顔を拭った。

iw「さんきゅ」

泣いていたたくせに、
彼はぶっきらぼうにそう言って答えた。

声はまだ震えている。

でも今は、その声を慰めてやる余裕も、
こぼれた涙を拭いてやる余裕も、
自分にはまだない。

涙は枯れないみたいだ。

でも、泣くのは今日で最後にしよう。

明日からは、いつもみたいに笑顔で、
阿部ちゃんの側にいよう。

だから、今日だけは、泣かせてほしい。

自分よりも俺たちを信じた彼を、
俺は彼以上に信じよう。

一人では無理かもしれないけれど、
一緒に信じている照がいる。

二人でいれば、
どちらかが信じていられれば、

きっとその思いが途切れることはないだろう。