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Side:fk
部屋の中は重苦しい雰囲気だった。
やっと佐久間と目黒が部屋に入ってくると、
照が静かにドアを締める。
長机と椅子が置かれただけの質素な会議室。
阿部ちゃんは部屋に入ってきた佐久間を一瞬だけ見て、
すぐに目を逸した。
ほんの数秒の沈黙が、
永遠のように感じる。
阿部ちゃんは椅子に深く腰かけて、
前に組んだ手を弄んでいて、
その手を止めると、
覚悟を決めたように顔を上げた。
ab「舞台の期間中、
たくさん迷惑かけてごめん」
メンバーの顔を見渡して、
彼はまずそう声をかけた。
淀みなく、明るく澄んだ声。
iw「迷惑だなんて思ってないから。
メンバーなんだし」
照がすかさず声をかける。
照はいつもみたいに浅く座って、
背もたれによりかかり、
難しいことを考えている時によく見せる、
少しおっかない顔をして阿部ちゃんを見ている。
阿部ちゃんは俯くように視線を下に落として、
自嘲気味に笑った。
ab「…みんなには全部、
ちゃんと話しておかないといけないなって」
全員口をつぐんだまま、
その低くて穏やかな声に耳を傾ける。
ab「もう隠したら許さないって言われたしね」
そう言って、伺うようにラウールに視線を向けたが、
ラウールが俯いたままなので、
阿部ちゃんとその視線がぶつかることはない。
どうか、その口から出る言葉が
悲しい言葉ではないことを願う。
ab「この間の入院中に、
先生と話してきた。
今後の治療方針についてとか、
病状についてとか。」
一度そこで言葉を切り、
落ち着かない視線をもう一度メンバー一人一人に向けていく。
不安そうな、怯えたような視線だった。
でもやっぱり他のメンバーも視線は下に下げたままで、
その視線は一向に交わることはない。
唯一、俺と目が合うと、
阿部ちゃんは安心したように、嬉しそうに微笑んだ。
その目にキラリと光るものが見えた気がした。
一度大きく息を吐く。
ab「選択肢は2つ。
今より強い薬を処方してももらって、
少しでも長く生きるために治療を受けるか、
薬も最低限、治療も最低限にして、
残りの時間をみんなと一緒に過ごすか」
嫌な予感がする。
全員がそれを感じ取っているのもわかった。
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年9月17日 22時
