花笑み Ⅱ (ページ13)

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もし、今時間を戻せるとしたら、
俺は間違いなく、

阿部との「氷河期」と言われる期間に戻りたいと、
心から思う。

あの時間を取り戻して、
もう少し一緒に、
同じ時間を過ごしたかったと、

ふと後悔に襲われる瞬間がある。

照に、そんな想いはしてほしくなかった。

もちろん、
この件に関して、
照だけが悪いとは思っていない。

だけど、残されるのは俺たちの方なのだ。

後悔を抱えて生きていかなくてはならないのは、
俺たちの方。

それは逃れようのない事実だ。

iw「なに？」

俺よりも大きな身長、
がっしりとした体格。

鍛え上げられた身体で、
正面で向き合って仁王立ちされると、
威圧感すら感じる程の圧倒的な存在感。

加えて今は、
おっかない顔をしているから、

見る人が見れば怖いんだろうな、と思いながらも、
俺にはやっぱり強がっているようにしか見えない。

「照はこのままでいいと思ってる?」

俺も人のことを叱れないくらいには口下手だ。

遠回しに物事を伝えるのは
どうにも上手く出来なくて、

だから、優しくも言えないし、
思っていることをそのまま口にすることでしか、
伝えることが出来ない。

iw「…なにが」

そう言ってとぼけるけれど、
視線は落ち着かない。

「阿部とのこと」

iw「…何が言いたい」

「そこまで鈍感じゃないだろう」

そう言うと、照はわかりやすく
視線を下に落とした。

iw「…どうにかする」

「出来無さそうだから言ってる。」

さっきまで威圧感すら感じた照は、
あっという間に小さくなって、

駄々をこねる子供のようにしゅんとしている。

iw「…分かってるよ。
　でも、あいつの諦めたみたいな
　ああいう言い方が気に食わない。

　 …それをあいつにわからせるまでは、」

「照の言ってることもわかる。
　わかるけど、
　この時間がもったいないと思わない?」

iw「…もったいない?」

口にすることは躊躇われたが、
やっぱり俺は言葉を濁してしまうと、

一番伝えたいことが伝わらない気がして、

それを口にしてしまう。

「もしこのまま阿部が死んだら、
　照は後悔しない?」

照は一瞬絶句したように目を見開いた。

iw「…何いってんの」