花笑み Ⅱ (ページ12)

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50.不器用な想いページ12

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稽古場の空気が少しだけピリついている。

元から俺自身は口数が多い方じゃないから、
別に被害を被っているわけじゃないが、

この俺たちの微妙な空気感は
現場全体の空気を悪くしていた。

稽古の厳しさももちろんあるとは思うが、
それ以上に、
照と阿部がひと悶着あった辺りから、
更に空気は重くなったように感じる。

照も阿部も頑固だから、

お互いに素直になれないし、
そのくせ変なところは大人で、

仲直りしたふりをして、
仕事や稽古については、
表面上で会話を交わしているけれど、

二人の空気は冷え切っていて、
見ている方がヒヤヒヤする。

nb「あー、もう」

その雰囲気が息苦しいのか、
翔太はいつにも増してイライラしていて、

時折こうして頭を掻きながら、
言葉にならない声をこぼしている。

このまま舞台の初日を迎えると思うと
気が重かったし、

誰かが動かないとこのままだと思った。

「照、ちょっと話そうか」

俺は様子を見て照に声をかけた。

その「誰か」に俺がなってやろうじゃないか。

きっかけがなくて、
お互い歩み寄れない苦しさを、
皮肉にも俺は一番良く知っている。

iw「いま？」

照は少し不機嫌な顔をしたが、
「今」と強めに言うと、おとなしくついてきた。