Apr.20 19:30 ページ9
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「さっきは本当にありがとうございました」
「いいんすよ!お互いさまってやつ」
途中のコンビニで買った肉まんを頬張りながら、街灯の少ない道を並んで帰る。無事にお小声をもらうことなく生還できたお礼に、肉まんは私の奢りだ。
お店から歩いて5分の距離に我が家があるのだが、ガクさんも同じ道なようで並んで歩いている。曰く、夜道のひとり歩きは危ないとのこと。せっかくガクさんは自転車なのに、今は大きい荷物になってしまっていた。
「ところで、ずっと気になってたんスけど」
「ん、なんですか?」
「お嬢のやづつ? って特注だったりします?」
私の歩く揺れに合わせて、シャラシャラと矢のぶつかる音がする。
上部に桜の花が咲いている矢筒は、遠くからでもひと目で私の物だとわかる。ほかに見たことがなく、明らかに手作業で刺繍が施されている。
「おば様のお下がりなので、わからないです」
「そーなんスね。あ、じゃあオレはこっちなので、気を付けて帰ってくださいね」
「あ、はい。ありがとうございました」
じゃあまた。そう言って自転車にまたがると、あっという間に見えなくなってしまった。はやい。
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「どっかで似たようなの見てる気がするんだけどなー」
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森。(プロフ) - 用語解説あるのすごく助かります!お話の雰囲気とテンポ感が好きです!次の話も楽しみです! (2023年3月12日 8時) (レス) @page9 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花束 | 作成日時:2023年1月19日 21時